タイ政府の観光・スポーツ省スラサック・パンチャレーンウォラクン大臣が、タイ国民が海外に出国する際に1000バーツ(陸路・海路は500バーツ)を課税する「Exit Fee」(出国税)の導入を提案している。年間100億バーツ(約400億円)の税収を国内旅行半額助成プログラム「Tiew Khon La Krueng」の財源とする計画で、財務省と協議中だが、1983年制定の決議令を根拠に行政令で即発効が可能とされ、Prachachatの2026年5月2日付報道では税務署長も「行政令あれば即課税できる」と述べたと伝えられている。
課税対象はタイ国籍を持つ国民のみで、外国人観光客は対象外。タイから海外に出国する際に空港・国境・港で1人1回ごとに徴収する仕組みになる見通しだ。航空便利用者は1000バーツ(約4000円)、ラオス・カンボジア・マレーシア・ミャンマーへの陸路出国や、船舶での海外渡航では500バーツとなる。年間100億バーツという税収目標は、タイ国民の年間海外渡航延べ人数の規模感から逆算した数字とみられる。
法的根拠となる1983年決議令は当時タイ国民の出国管理と外貨流出抑制のために制定されたもので、長らく休眠状態にあった。今回の提案は同法令を再活性化する形のため、新法成立を待たずに行政令一本で導入できる点が特徴だ。閣議承認が下りれば最短で数週間以内に発効する可能性がある。
税収の使途として念頭にあるのが、政府の看板観光振興策「Tiew Khon La Krueng」(半額旅行)プログラム。これはタイ国民が国内旅行する際の宿泊費・食費・交通費を50%政府補助する仕組みで、過去にも実施実績があり、コロナ禍以降の地方経済活性化策として位置付けられている。出国税で「外貨を国外で使う動き」に課税し、その収益で「国内消費を促す」政策ロジックだ。
ただ航空業界・旅行業界からは、出国税が航空券価格に上乗せされて国際線需要を抑制する懸念や、原資を出国課税に依存することへの持続可能性への疑問など、慎重論も出ている。
在タイ日本人にとっては、自身は対象外だが、タイ人配偶者・家族・友人・現地法人のタイ人スタッフが海外出張・旅行する際に1000バーツの追加負担が生じる可能性がある。日タイ間の往復が多いタイ人ビジネスパーソンには、年5回以上の往復で年間1万バーツ規模の追加負担となるため、企業としても出張費規定の見直しが必要になるかもしれない。