タイ最大の商業施設デベロッパー、セントラル・パタナ(CPN)が、2026年から2030年までの5年間で1,100億バーツ(約5,370億円)を投じる大型投資計画を打ち出した。5月に就任した新CEOのもと、ショッピングモールにとどまらず、住宅やオフィス、公共空間を組み合わせた複合開発を加速させる。タイ各地に「セントラル」の名を冠した商業施設を展開する同社の動きは、国内の街づくりの方向性を映し出している。
モール運営大手が描く5年計画
CPNはタイ全土でセントラルワールドをはじめとする大型商業施設を運営する、同国を代表する不動産・小売企業だ。今回発表した5年計画では、1,100億バーツを投資し、複合用途(ミクストユース)開発の件数を2025年の27件から2030年までに33件へと増やす。
開発の中身は、商業に加えて住宅、オフィス、公共スペースを一体化させたもので、バンコクなどの都市部だけでなく、地方の成長拠点も対象に含む。単なるモールではなく、人が住み、働き、集う「街」そのものを開発していく構えだ。
創業家出身の新CEOが掲げる「エコシステム」構想
この計画を率いるのは、5月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に就いたチャナワット氏。タイの巨大財閥セントラル・グループを率いるチラティワット家の一員で、不動産開発や小売、事業変革に20年以上携わってきた人物だ。
新CEOが掲げるのは、従来の不動産デベロッパーから、人・企業・パートナー・都市をつなぐ「統合エコシステム・プラットフォーム」への転換だという。AIやデジタル技術を活用して、来店客の体験や社内業務、テナントとの連携を高度化する方針を示している。
タイの消費と街づくりを左右する一手
セントラルの商業施設は、在住者にとっても旅行者にとっても、買い物や食事、待ち合わせの定番の場所だ。その最大手が5年で1,100億バーツを投じる計画は、タイの個人消費や都市開発が今後どこへ向かうのかを占う指標にもなる。
景気の先行きには家計債務の高止まりなど不透明感もあるが、大型投資に踏み切る背景には、観光回復や中間層の購買力への期待がある。地方都市への展開が進めば、これまで大型商業施設が乏しかった地域の暮らしや人の流れも変わっていきそうだ。

