バンコク都市圏のコンドミニアム(分譲マンション)市場で、売れ残りの在庫が約35万戸に積み上がっていることが、不動産大手ナイトフランクの調査で分かった。今のペースだと、この在庫をさばききるのに5〜6年かかる見通しだという。2026年第1四半期には都心の中心業務地区(CBD)で新規プロジェクトの発売がゼロになるなど、かつての建設ラッシュとは様変わりした市場の冷え込みが鮮明になっている。
売れ残り35万戸、はけるまで6年
ナイトフランク・タイランドによると、バンコクと周辺県を合わせたコンドミニアムの未消化在庫は約35万戸に達する。販売ペースから逆算すると、完売までに5〜6年を要する計算だ。背景には、ここ4〜5年の発売ラッシュで積み上がった物件に加え、購入を予約したものの住宅ローンの審査が通らずキャンセルになるケースが相次いでいることがある。
2026年第1四半期に新たに発売されたのは6,174戸。このうち都心のCBDでの新規発売はゼロで、約58%が都心周縁部、残り42%が郊外だった。高額な一等地の開発から手を引き、より幅広い層が買える価格帯へと、開発各社が軸足を移しているのが読み取れる。
デベロッパーは「マス市場」へ転換
供給の主役は、高級物件から大衆向けへと移りつつある。新規供給の68%超が、1平方メートルあたり8万バーツ(約39万円)を下回る価格帯に集中した。バンコク中心部の高騰した相場を避け、手の届く価格で実需層を取り込もうという戦略だ。
ただ、市場全体には根深い逆風が吹いている。タイは家計債務が高水準にあり、金融機関も住宅ローンの審査を厳しくしている。買い手は強気で価格交渉に臨み、値引きを引き出しやすい状況が続く。供給過剰と相まって、販売価格には下押し圧力がかかっている。
二極化する不動産、富裕層とプーケットは堅調
一方で、不動産市場のすべてが冷え込んでいるわけではない。ナイトフランクは、富裕層向けの戸建て高級住宅や、観光需要を背景にしたプーケットの物件は引き続き堅調だと指摘する。投資利回りの面でもプーケットは強さを保っているという。
タイのコンドミニアムはこれまで、外国人にも人気の投資対象だった。だが今回のデータは、立地と価格を見極めなければ、買っても簡単には売れない・貸せないというリスクがあることを示している。値引き局面は買い手に有利な半面、出口戦略まで見据えた慎重な選別が求められる局面に入っている。

