バンコクの中心部、にぎやかな新ペッチャブリー通りに、十数年も放置されたままの巨大な未完成ビルがそびえている。「スマイルスクエア」と名づけられた高級複合施設の跡だ。ホテルや住宅、商業施設を組み合わせた野心的な計画だったが、工事は止まったまま再開の気配はなく、いまや都心の「ゴーストビル」として通行人の目を引いている。
ホテルと住宅、商業施設を備えるはずだった
スマイルスクエアは、新ペッチャブリー通りのソイ・ペッチャブリー35の向かいに位置する。計画では、10階建ての商業・駐車場棟の上に33階建てのタワー2棟が立ち上がり、約400室の4つ星ホテルと208室の住宅ゾーン、ショッピングプラザが入る予定だった。
着工は2012年3月。当初は2019年の全体開業を見込んでいた。ところが工事は途中で止まり、骨組みをさらしたまま長い年月が過ぎた。今では完成した姿を見ることなく、コンクリートの巨体だけが街なかに残されている。
「サトーン・ユニーク」と重なる光景
放置された高層ビルといえば、バンコクでは30年以上も未完成のまま建つ「サトーン・ユニーク・タワー」が有名だ。チャオプラヤー川沿いにそびえるその姿は「ゴーストタワー」と呼ばれ、半ば肝試しの名所のようになっている。スマイルスクエアの光景は、その記憶を呼び起こす。
タイの不動産開発では、資金繰りの行き詰まりや景気の変化、許認可をめぐる問題などで、大型プロジェクトが途中で頓挫する例が少なくない。完成すれば街の顔になるはずだった建物が、逆に都市の空白として長く残ってしまう。
再開のめどなく、不動産市況の影も
スマイルスクエアがなぜ止まったのか、再開のあてはあるのか、現時点でははっきりしない。ただ、こうした未完成の巨大ビルは、華やかな計画の裏側にあるリスクを静かに突きつける。
折しもバンコクのコンドミニアム市場では売れ残り在庫が積み上がっており、不動産の先行きには慎重な見方も出ている。完成を待つ「眠れる巨人」と街がどう向き合っていくのか。スマイルスクエアの行方は、タイの都市開発が抱える課題を映す一つの窓でもある。

