タイ工業省の工場局が、物議を醸してきた製鉄会社「シンケユアン」の操業再開を認めたと報じられた。同社は規格外の鉄筋を製造していたとして2024年末から操業停止を命じられていたが、汚染対策や安全対策を繰り返し講じたことで、約18カ月ぶりに生産を再開する見通しだという。
監査院ビル崩落で浮上した規格外鋼材
シンケユアンは、タイ東部ラヨーン県バンカイ郡に工場を構える中国系の製鉄会社である。同社の名前が全国に知られるようになったのは、2025年3月28日の地震で、建設中だったバンコク・チャトゥチャック地区の会計検査院(監査院、SAO)の新庁舎が崩落した事故がきっかけだった。崩れたビルには同社が供給した鉄筋が使われており、その後の検査で、強度などが基準を満たしていなかったことが確認された。当局は在庫を差し押さえ、品質の問題が建物の構造に直接影響したとみている。
度重なる安全・環境違反で閉鎖
工場ではこれまでに火災やガス漏れも起きており、当局の立ち入り検査で複数の安全・環境上の違反が見つかっていた。工業省は2024年末、規格外の鉄筋を製造していたことを理由に工場の操業停止を命じた。2025年11月の時点でも操業は止まったままで、製鋼の炉は動いておらず、約400人の従業員は出勤の記録だけを続け、給与の75%が支払われていたとされる。
「永久取消」方針との間で
工業省のアカナット大臣は、シンケユアンの工場操業ライセンスを永久に取り消し、誘導炉(IF)技術の使用も恒久的に禁止する方針を示していた。今回、工場局が操業再開を認めたとされることは、こうした厳しい姿勢との間に緊張をはらむ。報道によれば、工業相は再開にあたって監視を強める構えだとされ、同社が再び問題を起こさないか、当局の対応が問われることになる。
安全への信頼を取り戻せるか
多くの死傷者を出したビル崩落の鋼材を供給した会社が、わずか1年半ほどで操業を再開することには、安全への懸念が根強く残る。タイでは建設ラッシュが続いており、鉄筋の品質は人々の暮らしと命に直結する。シンケユアンが本当に基準を満たす製品を作れるのか、そして当局が実効性のある監視を続けられるのか。今回の再開は、タイの製造業の安全管理が問われる試金石となりそうだ。