タイ保健省衛生局のアムポーン・ベンチャポンピタック局長は4月26日、屋台や市場の小売店に対し新聞紙で食品を包む慣習を中止するよう求める通達を出した。新聞紙は食品接触資材(Food Grade)ではなく、印刷インクや染料の有害物質が熱い食品や油分の多い食品に溶け出すことを理由に挙げた。
タイの市場では揚げバナナ、フライドチキン、カオパッド(チャーハン)、カオニャオ・ピン(もち米焼き)、サテーなどを新聞紙でくるむ光景が日常で、何十年も続いてきた。古紙の再利用と紙袋として安く手に入る合理性から、地方では今も主流の包装方式である。
衛生局が指摘した残留物質は4種類ある。1つ目は印刷で使われる鉛などの重金属。2つ目はインクに含まれる炭化水素類。3つ目は揮発性有機化合物(VOCs)。4つ目は印刷染料の化学物質。これらは新聞紙に微量で残留するが、紙が熱や脂で柔らかくなると、食品側に移行しやすくなる。
特に危険視されているのが「熱い」「脂が多い」の組み合わせだ。揚げ物の網からそのまま新聞紙に置く、屋台のカオパッドが入った発泡スチロール容器の蓋に新聞紙を使う、もち米焼きを新聞紙でくるんで持ち帰る。どれもタイの食卓で見慣れた手順だが、油が紙に染みた瞬間にインクの一部が逆流してくる、というのが衛生局の説明である。
新聞紙の上にプラスチック袋を敷いていても安全とはいえない。アムポーン局長は、Food Grade認証のないビニールであれば依然として食品と直接接する面があり、結局のところ汚染経路は残ると指摘する。
世界保健機関も10年以上前から「新聞紙でくるんだ食品」を発展途上国の食品衛生上の典型的なリスクと指摘してきた。インドや南アジアでも同様の通達が繰り返し出ているが、文化として根強い。タイ衛生局は今回、生産者だけでなく消費者にも「衛生規格を満たした店を選ぶよう」呼びかけ、新聞紙包みを見たら避けるよう注意を促している。
在タイの日本人にとっても他人事ではない。屋台で買うカオパッドが新聞紙でくるまれて出てきた経験は誰しもあるはずで、特に温かいうちに食べる習慣を考えると、長期的な摂取量はばかにならない。包装が気になる店は、ビニール袋単体や厚紙の発泡容器に切り替えている店を選びたい。