タイ政府が、外国人観光客を対象とした大規模な制度改革を準備していることがわかった。空港でのAI顔認証の導入、警察官のボディカメラ着用、新たな観光税の徴収、ビザ制度の見直しなどが柱で、観光担当大臣が近く首相とともにベトナムを訪問するのにあわせ、観光行政の立て直しを進める構えである。
観光客から徴収する新たな「観光税」
改革の目玉の一つが、外国人観光客から徴収する観光税である。当初は1人あたり300バーツ程度が想定されていたが、旅行者向けの保険や運用コストを上乗せするため、これを上回る金額になる可能性が指摘されている。徴収方法としては、航空券に上乗せする形や、入国前に「タイ・デジタル入国カード(TDAC)」を通じて支払う形が検討されているという。観光税は長年議論されながら導入が見送られてきた経緯があり、実現すれば多くの旅行者に影響する。
空港のAI顔認証と警察のボディカメラ
出入国の手続きには、AIによる顔認証技術が導入される見通しである。自動化ゲートでパスポートとTDACの情報を顔認証で照合し、入国審査にかかる時間の短縮を図るものとされる。あわせて、観光地などで対応する警察官にはボディカメラの着用を進める計画も挙がっている。観光客とのトラブルや料金をめぐる水掛け論を記録に残し、不正やぼったくりの抑止につなげる狙いがあるとみられる。
ビザ免除は60日から30日へ、到着ビザも限定
ビザ制度も見直される。タイは2024年7月から、93カ国・地域を対象にビザなしで60日間滞在できる制度を導入していたが、これを30日間に戻す方針で、2026年5月20日に閣議で承認された。さらに、到着時に空港などで取得できるアライバルビザについても、対象をインドやセルビアなど一部の国に絞り込む案が出ている。寛大すぎるとの指摘もあったビザ制度を引き締め、入国管理を強化する流れである。
改革の背景にある外国人犯罪と医療費の問題
一連の改革の背景には、観光をめぐる近年の課題がある。当局は、外国人の医療費未払いや、観光客が巻き込まれる事故、外国人による犯罪、そして観光業界の信頼低下といった問題に直面しているとされる。安さと手軽さで多くの旅行者を集めてきたタイだが、量から質への転換を迫られている。今回の改革は、観光客の安全と業界の持続性を両立させようとする試みといえる。一方で、手続きの煩雑化や負担増が旅行者離れを招くとの懸念もあり、制度設計の丁寧さが問われることになる。