タイ中部カンチャナブリ県で、元郡長と村長が、タイ国籍を不正に付与していたとして逮捕された。出生登録の書類を偽造するなどして、本来は資格のない人物にタイ国籍を与えていたとされる。同様の不正は各地で発覚しており、全国規模の汚職スキャンダルへと広がっている。
カンチャナブリで元郡長と村長を逮捕
逮捕されたのは、カンチャナブリ県ノンプルー郡の元郡長と、村長の2人である。2人は、不正にタイ国籍を付与する仕組みに関与していたとされる。タイでは、出生登録や住民登録を担う地方の役人が、書類を偽造したり登録を操作したりすることで、外国人や無国籍者をタイ国民として登録できてしまう余地があり、こうした権限の悪用が問題となっている。
全国に広がる「タイ国籍」の不正付与
偽の出生証明書をめぐる不正は、2026年に入って各地で相次いで摘発されている。バンコクでは、公務員を含む6人が、不正にタイ国籍を与えるために出生証明書を偽造したとして逮捕された。北部のナコンラチャシマ県(コラート)では、3人の公務員が、少なくとも10人の中国人の子どもに偽の出生証明書を発行し、住民登録を移していたとして摘発された。同県では、不正に登録された50件が取り消されている。
なぜ偽のタイ国籍が狙われるのか
タイ国籍を不正に得ようとする背景には、さまざまな事情があるとみられる。タイ人として登録されれば、土地の所有や就労、各種の権利の面で、外国人よりもはるかに有利になる。国境地帯や山岳地域には、もともと無国籍の住民も多く、本来の救済制度と、金銭を目的とした不正とが入り混じりやすい。今回のように地方の役人が関与する事例は、行政への信頼を揺るがすものである。
収束しないスキャンダル
出生証明書の不正をめぐる捜査は各県に広がっており、関与した役人の摘発が続いている。報道によれば、新たに28件の事案が浮上しているともされ、スキャンダルは収束していない。タイ国籍という国の根幹に関わる制度が、現場の役人の手で売り渡されていたとすれば、その影響は小さくない。当局は、不正に付与された国籍の取り消しと、関係者の責任追及を進めることになる。