タイの副運輸相シリポン氏が2026年4月29日、バンコク市バス公社(ขสมก./BMTA)に対し、累積負債1,500億バーツ(約6,750億円)と年間赤字80億バーツ(約360億円)の解消に向けた抜本的な改革を指示した。柱は800台の電動バス(EV)賃借、800台のEV購入、全路線の2ヶ月以内の再設計、Google等と連携したリアルタイム到着通知システム導入の4本立てだ。
中心になるのは老朽化した天然ガス(NGV)バスのEVへの全面置き換え。現行のNGVバスの多くは導入から30年超が経過し、1台あたり1日2,000バーツに達する保守費用が経営を圧迫している。シリポン氏は2570年度(2027年度)予算で800台のEVを賃借(予算81.4億バーツ)、700台を追加購入(予算71億バーツ)する計画を提示。合計1,520台のEV化を2571年3月(2028年3月)までに完了させる。EV化で運行コストは40〜50%削減できる見込みだ。
路線再編はBMTAに「2ヶ月以内に完成」と期限を切った。乗客データベース、EV充電ステーション設置場所、BTS・MRT・水上バスとの結節点を考慮した新路線設計が求められる。現行路線は「乗客の生活動線と合っていない」「空車運行が多すぎる」との指摘が以前から強く、改革の中心テーマとなった。バンコク中心部のバス網がBTS・MRTと並走しているのに対し、外周区や旧市街への支線が手薄という構造的問題にも踏み込む見通しだ。
到着通知システムは利用者への直接的な改善策で、Googleマップなどのナビプラットフォームと連携し、各バス停にいつバスが到着するかを正確に表示する。これは新型EV車両の配備と並行して整備される。バンコクで生活する人にとっては、現在の「BMTA公式アプリのバス位置表示が当てにならない」状況が大きく改善される可能性が高い。
運賃は引き続き「最低賃金の10〜20%以内」に据え置かれる方針で、利用者負担は増えない。日本円換算で6,750億円もの累積負債を抱える組織の改革が現実に進むかどうかは、2570年度予算の閣議承認と2571年1月の契約調印が分岐点となる。在タイ日本人にとっても、バンコクの公共交通の使い勝手が今後数年で大きく変わる可能性があるテーマだ。