タイ最大級のライブコマース女王ピムリーパイ(พิมรี่พาย)が2026年4月28日にTikTokとFacebookで実施したドリアン1個100バーツ販売ライブで、自身が10百万バーツ(約4,500万円)以上の赤字を出したことを4月29日のフォロー配信で告白した。「副首相のドリアン100Bライブ案」を実際に企業として実行した結果がどう転んだかが、本人の口から明らかになった形だ。
4月28日のライブはチャンタブリ県の果樹園を一括買取(タイ語で「เหมาสวน」=丸ごと請け負い)した上で開催。100万個の販売を目標に掲げたが、実績は受注20万個・売上約1,500万バーツ(約6,750万円)だった。視聴者数はTikTokとFacebookを合わせて約100万人で、社会現象級のバイラルとなったが、目標の5分の1にとどまった。残りの大量在庫は別ルートでさばくため、買取価格と売価の差額がそのまま赤字に転落した格好だ。
ドラマの中心はドリアンのグレードを巡る応酬だった。ピムリーパイ側は「輸出グレード(市場価格200バーツ超)を100バーツで販売した」と主張。一方、商務省副報道官コラニット・ノーンチュイ氏は「実際に売られていたのは輸出できないBグレードや小型・形が悪い品(タイ語でเกรดรอง)」だと反論した。両者の言い分にはズレがあり、SNSでも「写真と実物が違う」「割れているのが届いた」という購入者の不満が相次いだ。
ピムリーパイの戦略は典型的な「ロスリーダー(Loss Leader)」型ライブコマースで、ドリアンを集客の餌として赤字覚悟で安売りし、ライブ中に他の商品(化粧品・日用品・サプリ)を合わせて販売することで全体の収支を取りに行く形だ。ただし今回はライブ中の他商品の販売額が想定を下回り、ドリアン側の赤字を吸収しきれなかったとみられる。本人は「今年のドリアンは30%増産なのに消費が減っている。農家を助けるために一括買取で全サイズ仕入れた」と動機を語った。
このライブは副首相スパティー氏が2026年4月下旬に提案した「ドリアン1個100Bで売って国民を助ける」案と連動していた経緯がある。経済学者は「卸売価格を圧迫し農家を傷つける」と批判し、商務省も法的措置をちらつかせた。今回ピムリーパイが赤字を被ったことで「100Bライブ」案の経済的リスクが企業側にも明確に表れ、副首相の政策提案と現場のミスマッチが浮き彫りになっている。在タイ日本人にとっては、「タイ最大のライブコマースでも捌ききれない過剰生産」というドリアン市場の現状を窺い知る一件となった。