タイ石油大手バンジャックは9日、中東から同社シーラチャー製油所に到着した原油タンカーについて、イラン政府への金銭支払いは一切行っていないと正式に否定した。ホルムズ海峡の封鎖が長期化するなかで原油70万バレルの輸送が実現した経緯に注目が集まっていた。
バンジャックの説明によると、同社は3月17日にタイ外務省へ協力を要請する書簡を送付した。翌18日にはタイの外務大臣が在タイ・イラン大使館宛てに書簡を発出し、19日にはイラン大使との直接会談が行われた。外交ルートを通じた迅速な対応が功を奏した形である。
その後、イラン大使は本国政府と協議を進め、オマーン政府も交渉に加わった。3月23日、バンジャックは同社のタンカーがホルムズ海峡を無事に通過したとの連絡を受けた。到着した原油は約70万バレルで、エネルギー供給の逼迫が続くタイにとって貴重な一船となる。
今回の輸送が実現した背景には、タイ外相のオマーン訪問計画に象徴される積極的な外交努力がある。イランは4月8日にホルムズ海峡のタンカー通過を再び停止しており、今後も同じ手法で輸送を確保できるかは不透明である。
タイ国内ではジェット燃料の高騰によるLCCの運休やガソリンスタンドの夜間営業停止など、エネルギー危機の影響が広がっている。バンジャックの原油到着は一時的な安心材料になるものの、ホルムズ海峡をめぐる地政学リスクが解消されない限り、根本的な解決には程遠い状況が続く。

