タイ農業・協同組合省は4月9日、国内の肥料大手6社を招集して緊急会合を開催した。中東情勢の悪化に伴うホルムズ海峡での輸送船足止めを受け、尿素肥料の供給不安が農村部で広がっていたことへの対応で、大臣が直接6社を呼びつけ、実態確認と約束取り付けを行った。
在庫90万トン以上を確認
会合では、タイ国内の肥料在庫が90万トン以上確保されていることが明らかになった。農業・協同組合大臣は「現時点で供給不足に陥る状況にはない」と明言し、流通していた品薄の噂を否定した。6社の代表はそれぞれ在庫の十分さを裏付ける数字を提示している。
タイの年間肥料消費量は約500万トンとされる。在庫90万トンは約2カ月分に相当し、緊急調達が不要なレベルの備蓄量だと農業省は説明した。
価格面でも、各社は農家への値上げを行わないと約束した。ディーゼル価格が1リットル50バーツを突破し物流コストが上昇するなかで、肥料価格の据え置きは農業従事者にとって数少ない安定材料となった。
肥料と原油の深い関係
尿素肥料の製造には天然ガスが不可欠だ。アンモニアを合成する工程で大量の天然ガスを使用するため、原油・ガス価格の高騰は肥料製造コストに直結する。
中東の緊張が続く限り、輸入原料の価格は不安定なままだ。農業省はこの点を踏まえ、今後の安定供給に向けた追加輸入の交渉を加速させる方針も示した。ホルムズ海峡の情勢が長期化した場合に備え、カタールやマレーシアなど代替調達ルートの確保を並行して進めるとしている。
農業GDP8%を抱えるタイの食料安全保障
タイは農業がGDPの約8%を占める農業大国だ。コメ・砂糖・キャッサバ・パーム油・ゴムなど多様な農産物を輸出しており、肥料の安定供給は食料安全保障に直結する。
特に収穫期直前のタイミングで肥料供給が滞れば、翌期の作付けや収穫量に深刻な影響が出かねない。エネルギー危機が各産業に波及するなか、政府が肥料分野で先手を打った形だが、海上輸送の正常化がいつ実現するかは依然として不透明な状況が続いている。