タイ工業連盟(FTI)自動車部会は2026年5月25日、4月の自動車輸出が前年同月比8.43%減少し、特に中東向け輸出が過去5年来の最低水準まで落ち込み、約1.1万台の減少幅となったことを発表した。中東地域はタイの自動車輸出の第3位市場で2025年は20万台規模、輸出全体の21.17%を占めていた。FTIは「ホルムズ海峡情勢を含む中東緊張の継続が外部リスクとして残っている」と警告し、2026年の生産目標150万台の下方修正を検討する方針を示した。一方、4月の国内販売は48,394台で前年同月比+2.54%とプラスを維持、1-4月累計生産は473,545台で前年同期比+4%と健闘している。日本メーカーが中東輸出を主力とするタイ工場にとっては、地政学リスクの直接的影響が表面化する形となった。
中東向け5年最低、1.1万台規模の減少
FTI自動車部会の発表によると、4月の自動車輸出は前年同月比8.43%減少した。中でも中東向け輸出は過去5年来の最低水準を記録し、前年同月比で約1.1万台分の減少となった。中東地域はタイの自動車輸出市場として、ASEAN、オセアニアに次ぐ第3位の規模で、2025年実績では200,001台、輸出全体の21.17%を占めていた重要市場。3月時点で既にホルムズ海峡の一時閉鎖影響により約16%減を記録しており、4月も中東情勢の悪化が継続的にタイ自動車輸出を圧迫している。
4月国内販売は48,394台で前年比+2.54%
輸出が落ち込んだ一方、国内販売は持ち直しの兆しが見える。4月の国内乗用車・トラック販売は48,394台で、前月(3月)比は-19.16%と落ちたが、前年同月比では+2.54%とプラスに転じた。年初から続いていた国内市場の長期低迷から、わずかながらも回復の兆しが現れた形になる。バンコク・モーターショー期間中のEV納車などが国内販売を下支えしている要因とみられる。
1-4月累計生産473,545台、前年同期比+4%
1月から4月までの累計生産は473,545台で、前年同期比+4%の伸びを示した。内訳は、輸出向け生産が316,605台(66.86%、前年比+4.56%)、国内向けが156,940台(33.14%)。タイ自動車工業の生産構造は依然として輸出依存度が高く、輸出市場の動向が産業全体の収益に直結する関係を維持している。
2026年生産目標150万台、下方修正を検討
FTI自動車部会顧問・スポークスマンのスラポン・パイシッパッタナポン氏(นายสุรพงษ์ ไพสิฐพัฒนพงษ์)は会見で、2026年通年の生産目標を150万台(前年比+3%)に据え置く現在の方針について、「中東情勢の悪化が想定以上に長期化する場合、下方修正を検討する」と明言した。中東向け輸出の落ち込みが続けば、輸出全体の数値が目標に届かなくなる可能性が現実味を帯びる。
外部リスクの3本柱、中東+米中貿易戦争+部品コスト
FTIが指摘する外部リスクは3本柱で構成されている。1つ目は中東紛争(イラン-イスラエル間の緊張、ホルムズ海峡情勢)。2つ目は米中貿易戦争による世界経済の不確実性。3つ目は部品コストの上昇と国内需要の弱含み。これらが複合的にタイ自動車産業の収益性を圧迫しており、特に4月単体ではホルムズ海峡経由の中東向け輸送リスクが直接的に響いた。
トヨタ・いすゞ・ホンダのピックアップ・SUVが中東輸出主力
タイの自動車輸出の主力プレイヤーは、トヨタ、いすゞ、ホンダ、日産、三菱、マツダといった日系メーカー。タイ工場で生産されるピックアップトラック(いすゞD-Max、トヨタHilux、フォードRanger等)とSUV(トヨタFortuner、三菱Pajero Sport等)は、中東地域で広く販売されている。ピックアップトラックは中東諸国の主要都市・砂漠地帯で実用的な車両として支持されており、タイ工場からの輸出依存度が高い。中東向け輸出の落ち込みは、これら日本メーカーのタイ工場の稼働率と収益性に直接影響を及ぼす構造になっている。
ホルムズ海峡情勢、海運コストとリードタイムを圧迫
中東向け輸出の落ち込みの背景には、ホルムズ海峡を経由する海運リスクの上昇がある。ホルムズ海峡はペルシャ湾と外洋を結ぶ唯一の海上ルートで、サウジアラビア、UAE、カタール、クウェート、バーレーン、オマーン、イランへの自動車輸送はここを通る。一時的な閉鎖や紛争の激化があると、海運保険料が高騰し、リードタイムが伸び、輸送コストが船社からメーカーに転嫁される。この結果、中東向け車両の到着価格が上がり、現地ディーラーの仕入れ判断が慎重になる連鎖が生まれている。


