バンコク中心部の繁華街、シーロム・スラウォン界隈。オフィスワーカーの昼食の定番である「カオゲーン」が、この15年で一皿31バーツから65バーツへと値上がりした。上昇率は110%、つまり2倍を超えた計算だ。タイの経済紙プラチャチャートが、5つの政権をまたいだ15年間の価格を調べた。景気の停滞が言われ続ける一方で、庶民の一皿だけは着実に高くなっている。
庶民の一皿「カオゲーン」とは
カオゲーンは、ご飯の上に好きなおかずを数種類のせてもらう、タイの定番の安価なランチだ。日本の「ぶっかけ飯」や定食に近い。屋台や食堂で手軽に食べられ、会社員からその日暮らしの労働者まで、幅広い層の胃袋を支えてきた。とりわけシーロム・スラウォンは、高層オフィスと屋台街が密集する職住近接のエリアで、ここの食事代は庶民の生活コストを映す鏡のような存在である。
15年で2倍を超えた一皿
プラチャチャートの調べでは、同じ界隈のカオゲーンは15年前の一皿31バーツから、現在は65バーツになった。単純計算で110%の上昇である。この間に政権は5つ入れ替わったが、物価の右肩上がりは政権の色を問わず続いた。外食の価格は一度上がるとなかなか下がらず、わずかな値上げの積み重ねが、長い目で見ると2倍という大きな差になって表れる。一皿数十バーツの世界の話だが、毎日続く昼食だからこそ、その差は家計に効いてくる。
賃金は追いついたのか
では、稼ぎのほうはどうか。15年前にあたる2011年ごろ、バンコクの最低賃金は日額200バーツ台だった。その後2013年に全国一律で300バーツへ引き上げられ、2025年7月からは400バーツになっている。およそ8割の伸びだ。これに対して、この一皿の値上がりは110%。つまり食費の上昇が賃金の伸びを上回っており、額面の給料が増えても、ランチ1食の実質的な負担はむしろ重くなっている。物価高が生活費を静かに圧迫している構図が、たった一皿の値段から透けて見える。