バンコクのヴィパヴァディ・ランシット通りで5月30日、走行中の路線バスの運転手が突然意識を失った。乗客らおよそ15人を乗せたバスは路肩の標識をかすめて停止し、異変に気づいた市民の通報で駆けつけた交通警官が、心肺蘇生(CPR)を施して救急隊の到着までをつないだ。
現場はヴィパヴァディ・ランシット通りの上り(郊外方向)、ラクシー地区の付近である。意識を失ったのは、パークレットの船着場とモーチット第2バスターミナルを結ぶエアコンバス52番の運転手だった。車内には乗客と車掌を合わせて約15人がいたが、バスは道路の左端に寄って止まり、二次的な事故にはつながらなかった。
事の発端は、バイクで通りかかった一人の市民だった。バスが路肩の道路標識に接触し、そのまま動かなくなっているのを見て不審に思い、近くで勤務していた交通警官にすぐ知らせた。警官が駆けつけて確認すると、運転手は運転席でぐったりと意識を失っていた。
警官は直ちに応急手当てに入り、救急隊が到着するまでの間、心肺蘇生を続けた。並行して救命・救助隊と搬送先の病院に連絡を取り、運転手はチュラポーン病院へ緊急搬送された。一連の救助の間、警官は周囲の交通整理も担った。
心停止や意識消失では、その場に居合わせた人による最初の数分間の対応が救命率を大きく左右するとされる。心肺蘇生は早く始めるほど効果が高く、救急隊の到着前にその場の人が手を動かせるかどうかが分かれ目になる。今回は、異変を見逃さなかった市民の通報と、現場近くにいた警官の即応が重なった。
タイでは、事故や急病の現場で見知らぬ人を助けに動いた市民が、しばしば「善良な市民」としてニュースで取り上げられる。一方、走行中のドライバーの急病は大きな事故に直結しかねない危うさもはらむ。乗客と車掌を含む車内の約15人が無事に済んだのは、バスが左端へ寄って止まったことと、周囲の素早い連携が重なった結果といえる。