タイ深南部パタニ県で今年2月に起きた給油所の連続爆破事件で、警察は5月28日、実行グループで見張り役を担ったとされる21歳の男を逮捕した。男はパタニ県の裁判所が出した逮捕状に基づき、首都バンコクへ向かう途中の中央駅で身柄を確保された。深南部の武装勢力による事件として、当局が捜査を進めている。
バンコク中央駅で身柄確保、テロ共謀などの容疑
逮捕されたのはニウスマン容疑者(21)。警察によると、容疑者は爆破の実行時に見張り役を務めたほか、犯行前の打ち合わせにも加わり、武装組織につながる戦術的な訓練を受けていたとされる。かけられた容疑は、テロ行為の共謀、計画的な殺人未遂、犯罪組織への加入、無許可での爆発物所持など複数にのぼる。パタニ県裁判所が発付した逮捕状を受け、列車でバンコクへ移動しようとしていたところを中央駅で取り押さえられた。深南部からの容疑者が首都で拘束された形で、当局は背後の組織や武器の流れについても調べを進めるとみられる。
2月にPTTの給油所2か所で爆発、トイレに爆発物
爆破が起きたのは2月2日から4日にかけてのことだった。パタニ県ムアン郡にあるPTTの給油所2か所で、トイレに仕掛けられた爆発物が相次いで爆発した。いずれも建物に被害が出て、居合わせた利用客らがパニックに陥った。死者は伝えられていないものの、給油所は車やバイクの利用者が日常的に立ち寄る場所であり、そこを狙った攻撃は地域住民に強い不安を与えた。深南部では、商業施設やインフラ、公共の場を標的にした爆発事件がたびたび起きている。
続く深南部の緊張、警察署襲撃や議員襲撃も
パタニ県では近年、警察署への襲撃や、警察官の妻が銃撃されて死亡する事件、国会議員の暗殺未遂など、武装勢力によるとみられる事件が相次いでいる。2025年だけでも、深南部では150件の治安事件で48人が死亡したと集計されている。今回の給油所爆破も、こうした南部の不安定な治安情勢の延長線上にあり、当局はテロ事件として捜査を続け、ほかの関係者の行方も追っているという。
20年以上続く南部紛争という背景
タイ深南部のパタニ・ヤラー・ナラティワートの3県は、住民の多くがマレー系のムスリムで、2004年以降、分離や自治を求める武装勢力と治安部隊との対立が続いてきた。タイ南部国境県行政センター(SBPAC)の集計によると、2004年1月から2025年12月までに1万116件の事件が起き、5,999人が死亡した。このうち民間人が3,661人を占め、負傷者は1万3,519人にのぼる。暴力の規模は2007年をピークに長期的には減少傾向にあるが、火種は今も消えていない。給油所のような生活の場が標的になる今回の事件は、20年を超える紛争がなお地域に影を落としていることを示している。


