タイの大手銀行アユタヤ銀行(クルンシィ)の調査部門が、2026年のタイ経済の成長率予測を1.9%に引き下げた。2025年の2.4%から鈍化する見通しで、政府の景気刺激策が下半期を支えるものの、地政学リスクや米国の通商政策の不透明さ、国内の構造的な制約が重しになると分析している。
成長率は2.4%から1.9%へ
クルンシィ・リサーチが5月29日に公表した見通しによると、2026年のタイの実質経済成長率は1.9%にとどまる。前年の2.4%から一段と減速する数字である。
成長を押し下げる要因として挙げられたのが、地政学的な対立、アメリカの通商政策をめぐる不確実性、そして国内に積み残された構造的な問題である。中東情勢の長期化や、貿易の障壁がさらに強まるような事態になれば、経済は予測以上に落ち込む恐れもあると警告している。
個人消費は4年ぶりの低い伸び
国内の個人消費は、過去4年で最も低い伸びにとどまるとみられている。背景には、エネルギー価格の上昇による生活費の高まりがある。
加えて、農業をはじめとする家計の収入が伸び悩んでいることや、家計の借金がなお高い水準にあることが、人々の購買力を抑え込んでいる。暮らしの足元が弱いままでは、消費が経済を引っ張る力にはなりにくい。
観光の回復が遅れている
頼みの綱である観光の回復も遅れている。クルンシィは、外国人観光客の数が2年続けて減少すると予測した。
理由として、旅行にかかる費用の上昇に加え、中東情勢を背景とした安全面への不安が挙げられている。特に、ヨーロッパやアメリカ、中東からの長距離客の戻りが鈍い。さらに、近隣諸国との観光客の奪い合いが激しくなっていることも、タイには逆風となっている。
外需と構造問題のはざまで
輸出は、年明けの第1四半期には堅調だった。しかし、米国の通商政策しだいでは先行きの不透明感が強く、外需に頼り切ることも難しい。
内需は生活費高と家計債務に抑えられ、観光は伸び悩み、外需は不確実という構図である。1.9%という数字は、こうした内外の弱さが重なった結果といえる。政府の刺激策がどこまで下支えできるかが、年後半の焦点になる。