タイの国家エネルギー政策委員会(กพช./NEPC)が2026年4月29日、家庭の屋根に設置した太陽光発電パネルから余った電気を電力会社が1単位2.20バーツで10年間買い取る「ソーラー国民(โซลาร์ภาคประชาชน)」プログラムを正式承認した。前日4月28日に閣議が承認した「国家エネルギー政策アジェンダ」の柱の一つで、家庭向け電気代の200ユニット以下3バーツ据置策と並ぶ国家戦略となる。エネルギー規制委員会(กกพ./ERC)が2026年6月までに具体的な規則・公示を発布し、6月の請求分から制度がスタートする見通しだ。
「ソーラー国民」プログラムはNet Billing(ネット・ビリング)方式で運用される。家庭が日中に太陽光で発電した電力を、まず自家消費して残った余剰分を電力公社が1単位2.20バーツで買い取る仕組み。住宅で電気を使う時間と発電する時間がずれるため、太陽光パネルの導入家庭は日中に発電した余剰を売り、夜間に電力会社から電気を買う形になる。タイ全国の総買取上限は500メガワット、1メーター(家庭契約)あたりの売電上限は5キロワットで、契約期間は10年。
家計効果は大きい。例えば3キロワットの太陽光パネルを屋根に設置した場合、晴天時の日中発電は約12〜15キロワット時/日で、自家消費を引いて余剰5〜8キロワット時/日を売電すると月300〜500バーツの収入になる。家庭が電力会社に支払う電気代を、自家消費(実質節約)と売電(実質収入)の両方で削減できる。タイ国内のソーラーパネル設置費用は3キロワットシステムで約8〜12万バーツ、Net Billing制度を活用すれば6〜8年で投資回収できる試算だ。
この政策は4月29日にスクンビット労働相がワンライ祭典トラック事故対応で多忙な中での承認となったが、タイ家庭の電気代問題への抜本対策として位置づけられている。直前の3〜4月には民間アパートの賃貸電気料金(1単位7〜10バーツの上乗せ)問題、コンケン学生寮の月電気代6,966バーツ高額請求問題、コラート初ダンキンドーナツ閉店(経済不振)など、電気代由来の事件が連発していた。Net Billingで家計の純電気代を下げる取り組みは政府レベルでの正面突破として歓迎される一方、規制公示の遅れや電力公社の系統対応能力が懸念点として残っている。
在タイ日本人で持ち家・コンドミニアム所有者にとっては、屋上に太陽光パネルを設置できる環境ならNet Billingで電気代削減と売電収入の両取りが可能になる。バンコク・チェンマイ・パタヤなどでは住宅オーナーがソーラーパネル設置業者と契約して6〜8年で投資回収するパターンが既に普及しており、今回の制度はそれを国家レベルで後押しする形だ。賃貸住宅の場合は大家との合意が必要で、コンドミニアム規約上の制限も確認すべき要素となる。タイの太陽光パネル産業(中国・韓国・タイ国内メーカー混在)の活性化にもつながる政策で、6月以降の制度スタートを前に住宅オーナーの問い合わせが急増する見通しだ。