タイ・ナコーンラーチャシーマー県(コラート)The Mall Nakhon Ratchasima(ザ・モール・ナコーンラーチャシーマー)に1992年頃に開業したダンキンドーナツのコラート初出店店舗が、34年の歴史に幕を閉じることが2026年4月30日に明らかになった。閉店の直接の理由は「経済不振の長期化に耐えきれない」という経営判断で、タイ全国で続くカフェチェーン業界の地殻変動を象徴する事件として注目を集めている。
ダンキンドーナツ自体は1981年にバンコクのサイアムスクエアで初出店し、コラート店はその約10年後の1992年頃にThe Mall Nakhon Ratchasima内で開業した「東北部最古」のダンキン店舗の一つだった。タイのダンキンドーナツは現在、Mudman Public Co.,Ltd.(ムードマン・パブリック)が運営するフランチャイズで、全国に200店舗以上を展開してきた。コラート店は同地域でドーナツチェーンとして30年以上にわたって地元客に親しまれており、子どもの頃からの常連客が今も家族連れで来店する世代をまたぐ存在だった。
閉店の背景には複数の要因が重なっている。1つ目は2026年に入ってからのタイ経済全体の鈍化で、特に地方都市の中流家庭の可処分所得が削られている。タイ商工会議所大学の最新調査では、月収15,000バーツ以下のタイ労働者の98%が世帯平均50万バーツの債務を抱えており、外食頻度や「ご褒美購買」が大きく減っている。コラート店のような単価200〜300バーツの「中価格帯のカフェ」は、節約志向の直撃を受けやすい。
2つ目は競合の激化で、コラート市内ではミスタードーナツ、クリスピークリーム、カフェ・アマゾン(PTT傘下)、Inthanin(Bangchak傘下)などがそれぞれ複数店舗を構えている。3つ目はThe Mall Nakhon Ratchasima自体の集客動向で、近年はセントラルプラザ・ナコーンラーチャシーマーやテラ・ピンクラオの新興モールに客足が移っており、老舗テナントの撤退が連鎖している。
在タイ日本人で家族でコラートを訪れる層には親しみのあった店舗だっただけに、SNSでも「子どもの頃から行っていた」「コラートに来るたびに寄った」という名残惜しむ声が広がっている。日系企業のタイ駐在員家族にとっても、コラート工業団地の周辺で出張時に立ち寄る休憩スポットとしての位置づけがあった。タイの「老舗の閉店」はピムリーパイのドリアン1個100Bライブ赤字、月4万人解雇、SSO40億B消失と並ぶ経済の風向き指標として記憶される事件となりそうだ。