タイの社会開発・人間安全保障省(พม./MSDHS)のニコン・ソムクラーン大臣が2026年4月29日、バンコクのバーンサーンケー高齢者開発福祉センターを訪問し、地域コミュニティ向け昼間世代間ケアセンター「DAY CAREバーンサーンケー」を正式に開設した。タイが2026年に「完全な高齢化社会」(人口の14%以上が65歳以上)に到達したことを受けた施策で、10年以内に高齢者人口が全人口の20%に達するとの予測に対応する統合ケアモデルとして位置づけられている。
DAY CAREバーンサーンケーは「家族と一緒に住みながら日中だけセンターで過ごす」形式の通所型福祉施設で、これまで一般的だった「入居型老人ホーム」とは異なるモデルだ。室内施設にはスヌーズレン(多感覚刺激療法)室、脳機能・記憶リハビリテーション室、高齢者の手作り製品コーナー、世代間交流スペースなどが整備されている。バンコク中心部のソンクラーンロード沿いという立地で、家族が朝に送り、夕方に迎えに行く都市生活者向けの設計となっている。
タイの高齢化はアジアで最速級のスピードで進行している。2026年時点で65歳以上人口は約1,300万人(人口の19%)に達し、ニコン大臣が指摘した「10年以内に20%」のシナリオは現実味が高い。日本(30%)・韓国(21%)に続くアジアの高齢化大国となるが、社会保障制度(年金・医療・介護)の整備は両国に比べ遅れており、家族介護に依存する構造が長く続いてきた。
新モデルのDay Careは、家族の負担を減らしながら高齢者の社会参加・身体機能維持を両立する仕組みだ。バンコク都心部では共働き世帯が増加しており、平日の日中に高齢の親が一人で家にいる「孤独化」「身体機能低下」「うつ・認知症進行」のリスクが顕在化している。バーンサーンケーのモデルは月額数千バーツで利用でき、入居型老人ホーム(月3-5万バーツ)に比べ大幅に安価な点が特徴だ。
在タイ日本人にとっても重要な情報だ。タイで暮らす日本人退職者・高齢駐在員家族は5万人を超えるとされ、近年は「タイで老後を過ごす」ロングステイ層も増加している。日本の介護保険・社会保障から離れた環境で、現地の福祉サービスを使う選択肢が見えてくる。バーンサーンケーのDay Careモデルが全国に展開されれば、タイ在住の高齢日本人が「家族と離れず、現地のサービスで日常を過ごす」道が現実化する。タイ社会開発省は今後、チェンマイ・コラート・ソンクラーなどの主要都市に同モデルを順次拡大する方針を示している。