米国税関・国境警備局(CBP)で活躍するビーグル犬「メルラ」が、タイから入国しようとした旅行者のスーツケースから100個以上の豚肉・鶏肉サンドイッチを嗅ぎ分けて検知し、全数が即時廃棄処分となった事案が話題を呼んでいる。CBPが公表したもので、タイ料理文化と米国の厳しい農産物規制の衝突を象徴するエピソードとなった。
当該事案は2026年4月、米国ワシントン州の空港で発生した。タイ出身の旅客がスーツケースに豚肉入り・鶏肉入りのサンドイッチを大量に詰めていたところ、CBPの「ビーグル・ブリゲード」と呼ばれる農産物検疫K9ユニットのメルラが、荷物の前で座り込んで反応を示したことで発覚した。
確認の結果、100個を超えるサンドイッチが出てきた。豚肉と鶏肉の具入りが中心で、米国の食品持ち込み規則違反に該当するため、全品を即時没収して廃棄処分とした。旅客には申告漏れの違反が適用され、CBPから「到着時には農産物アイテムをすべて申告すること」との注意喚起が改めて発表された。
米国は豚肉・鶏肉を含む肉製品の持ち込みに厳しい規制を敷いており、アフリカ豚熱(ASF)や高病原性鳥インフルエンザの国内農家への侵入を防ぐための防疫最前線に位置付けている。検知を担うビーグル犬は「ビーグル・ブリゲード」として全米の主要国際空港に配備され、訓練された嗅覚で肉・果物・種子・植物を瞬時に見分ける。
タイから米国への訪問客による違反事例は繰り返し発生しており、タイ料理ならではの「パンにタイの具(ムー・ヨー、ムー・デーン、ガイ・ヤーン等)を挟んだサンドイッチ」「タイ風ソーセージ」「タイ産フルーツ」などが頻繁に没収されている。現地在住のタイ人コミュニティや友人・家族へのお土産として持ち込もうとするケースが多いが、量の多寡にかかわらず法令違反となる。
米国入国時には、農産物や食品類を持ち込む場合は必ず税関申告書で「Yes」を選択し、係員に内容を提示する必要がある。申告すれば没収されるだけで済むが、申告せずに持ち込むと、金額によっては刑事罰(罰金数千ドル規模)や入国拒否のリスクにつながる。
タイ在住の日本人にとっても、この話題は他人事ではない。タイから米国・EU・オーストラリアへの渡航時に「タイの味を持っていきたい」と肉や果物を詰めるケースは少なくないが、いずれの国も家畜伝染病対策で厳しい規制を敷いており、バンコク・スワンナプーム空港の出国ラウンジで「ここまでは大丈夫」と思って選んだ食品が、到着空港で没収される事態は珍しくない。
在米の外国人向け情報サイトでは「タイ料理を米国に持ち込む正攻法はフローズン加工品で米国認定業者のもの」「ムー・ヨーや豚肉入りレシピは原則アウト」などの注意書きがまとめられており、旅行前のリサーチが不可欠だ。