パタヤ近郊のバングラムン郡ノンプラーライ地区で、タイ国内では初めてとされる本格的な電子タバコの製造工場が摘発された。6月8日、警察とバングラムン郡長、特別捜査局(DSI)の合同チームが3〜4ライ(約4,800〜6,400平方メートル)の倉庫を包囲したもので、中で働いていたミャンマー人とみられる作業員数十人が一斉に逃走した。
検問のトラックから工場が発覚
摘発のきっかけは、ありふれた検問だった。捜査員が走行中のブロンズ色のいすゞD-MAXを停止させたところ、荷台から完成品の電子タバコ8,000本以上が、40個の茶色い段ボール箱に詰められた状態で見つかった。運転手は、近くの倉庫で積み込んだばかりだと供述。これを手がかりに捜査員が倉庫を特定し、製造拠点の摘発につながった。
倉庫は外から見ても用途が分かりにくい造りで、住宅や事業所が点在する一帯に紛れていた。観光客が集まるパタヤから近い立地で、これだけの規模の密造施設が稼働していたことになる。
タイ国内で初の製造拠点
DSIの特別事件捜査センター第2地域を率いるキティコム空軍少将は、今回の摘発を「前例がない」と表現した。これまでタイで出回る電子タバコは輸入品が中心とみられていたが、国内で本格的に製造する拠点が確認されたのは初めてだという。
国内に製造拠点ができれば、国境での取り締まりをかいくぐって安定的に供給できるようになる。輸入品より流通の足がつきにくく、根強い需要を背景に、密造がひとつの「事業」として成り立っていた可能性がある。
当局は税関局や工業省と連携し、製造に使われた化学物質や機材がどこから持ち込まれたのかを追う方針だ。逃走した作業員の身元確認も含め、捜査は続いている。立件は、関税法、公衆衛生関連法、そして無許可の工場操業を禁じる法律に基づいて行われる見通しである。
電子タバコは全面禁止のタイ
タイでは2014年から、電子タバコの輸入・販売・所持が法律で禁止されている。観光客が知らずに持ち込んで摘発される事例も後を絶たず、所持だけでも逮捕や高額の罰金、国外退去の対象になりうる。
政府は近年、取り締まりを一段と強化してきた。2025年3月には、ノンタブリ県バンブアトーンで約1億3,000万バーツ(約6億4,000万円)相当の密輸電子タバコが押収され、当時のペートンタン首相が現場を視察して全国的な取り締まりを呼びかけている。それでも各地で販売店や密輸ルートの摘発が相次ぎ、需要の高さがうかがえる。
禁止されているはずの製品が、国内の工場で量産されていた。今回の摘発は、規制と実態の隔たりの大きさをあらためて浮き彫りにした。当局がどこまで流通網の全容に迫れるかが、次の焦点になる。