タイ北東部カラシン県で、代表的な輸出農産物である「ナムドーマイ」「ケオ」種のマンゴーが、キロあたり3バーツという衝撃的な底値まで下落していることが、現地農家の証言から明らかになった。シーズン初めには60バーツで取引されていた同じ品種が、わずか数週間で95%の大幅下落。農家グループは10年ぶりの最安値を記録しているとして、政府への緊急支援を求めている。
取材に応じたのはカラシン県ムアン区ブンウィチャイ村で10年以上マンゴーを栽培してきたパンティサ・ムックシンさん(37歳)。パンティサさんは、ブンウィチャイ区で大規模なマンゴー生産農家グループ「ペーンヤイ(大規模区画)」として登録された100軒以上の農家に所属し、数千ライ規模で「ナムドーマイ」と「ケオ」を栽培・出荷している。
今シーズン(2026年4月始まり)、序盤は順調で1キロあたり60バーツの卸売価格がついた。取引先は主にタイ中部のパッキング施設で、例年と大きな違いはなかった。しかし4月中旬以降、価格が急速に下落を始め、今週に入って3バーツまで底値を切った。
パンティサさんは「10年マンゴーを育ててきて、ここまでの暴落は初めて」と肩を落とす。ブンウィチャイ地区のマンゴーは、見た目・甘み・果肉の質いずれも高評価で、今年の生育状況も良好だった。にもかかわらず市場価格が崩壊したため、農家グループ全体が収穫しても採算が取れない状況に追い込まれている。
暴落の背景には、中東情勢に端を発したエネルギー価格の高騰と、タイ国内の農産物物流コストの上昇がある。パッキング業者は輸出コスト上昇に加え、中国市場向けの需要変動も受け、買取価格を低く抑える動きに出た。さらに国内需要側でも物価高で家計支出が切り詰められ、フルーツへの出費が控えられる傾向が重なっている。
カラシン県の農家グループは、政府に対して価格支持策、緊急買取、または出荷支援金などの介入を要請している。タイの農産物相場は過去にもコメやドリアンで大幅下落が起き、その度に政府が買取保証・補助金で介入してきた経緯があり、マンゴー農家側も同様の対応を期待している。
マンゴーはタイの代表的な輸出農産物で、最大輸出先は中国。2025年度のマンゴー輸出額は数十億バーツに達しており、農村地域の現金収入を支える重要品目となっている。今回のように生産地で買取価格が暴落すると、農村経済全体に波及し、農家の次年度の作付けや投資判断にも影響が出る。
在タイ日本人にとって、マンゴー価格の動向はスーパーや市場での日常的な買い物価格にも直結する。産地価格が3バーツまで下がっても小売価格が連動するとは限らないが、今後の市況次第で「ナムドーマイ」などの人気品種が一時的に安く手に入る局面がある可能性はある。