ラヨーン県マーブタープッドで起きた警察追跡バイク転倒死の事件で、目撃者からの新たな証言が浮上した。先に警察は「追跡中に路肩の駐車車両と接触して単独転倒した」と公式説明していたが、現場にいた第三者目撃者は「警察官が足を使って被害者のバイクを蹴り倒し、直後に転倒した瞬間を見た」と証言し、SNSで波紋を広げている。
死亡したのはシワナート氏(25歳、姓非公開)。4月23日午後、マーブタープッド警察署の警邏隊から逃げる途中、バイクが駐車中の自動車に接触して転倒、路面で頭部を強打し即死した。遺体の検査では違法薬物は見つからなかったが、警察が現場近くの投棄物を回収したところ、ヤーバー(メタンフェタミン)106錠入りの財布が発見された。
目撃者の証言によれば、事故の瞬間には警察官が自身のバイクで追走し、接近したタイミングで足を伸ばして被害者のバイクを蹴り、被害者がバランスを崩して駐車車両に突っ込む形になった。この目撃情報を裏付ける動画がSNSで拡散し、家族側が主張してきた「警察による物理的な介入」説が一定の証拠を得た形となった。
一方でラヨーン県警察は、4月24日に公表した公式説明で「被害者が自分で路肩の駐車車両に接触して単独転倒した」との立場を崩していない。蹴り行為の存在については「ボディカメラの映像を含めて調査中」と回答するにとどまっており、内部調査の方向性が注目される。
現場近くの公道に設置されている防犯カメラは「故障中で使用不可」の状態で、客観的な映像証拠が決定打にならない状況が続く。警察が携行する個人用ボディカメラ(BWC)の映像が今後の焦点となるが、開示のタイミングと範囲について被害者家族と警察側の間でまだ合意に至っていない。
タイでは過去にも警察追跡中の事故死事案で、目撃者のスマホ映像が内部調査や幹部処分に発展したケースがある。今回の案件も、SNSで拡散する目撃者動画の信憑性確認と、警察ボディカメラ映像の突合せが進めば、事件の性格が「単独事故」から「警察職務中の過失・過剰介入」へ変質する可能性がある。
被害者の家族は、ラヨーン県警察本部に対して内部調査の結果と全ての映像証拠の公開を正式に要求している。公安当局への独立調査申立も視野に入れる構えで、事件は警察の職務執行手続きへの社会的信頼問題へと発展しつつある。
在タイ日本人コミュニティにとって、警察の職務質問・追跡手続きの実態は治安認識に直結する関心事項。外国人が同様の状況に置かれた場合の対応基本は「停止要請に素直に応じ、身分証を提示する」こと。疑惑があっても路上での逃走は命を失うリスクに直結することが、今回の事案で改めて浮き彫りになった。