タイ自動車市場の牽引役、トヨタ・モーター・タイランドがチャチュンサオ県バンポーに構える第3工場を報道陣に初めて開放した。「Toyota Trusted Services Open House III」と題したメディアイベントで、内燃機関(ICE)車と電動ピックアップの両ラインを並列公開。タイ製造拠点としての最新ステータスを示した。
バンポー工場は敷地1,500ライ超(約240ヘクタール)。トヨタ・モーター・タイランドが保有する第3の組立工場で、タイ国内市場向けと輸出向けの両方を担う。
報道陣に披露されたのは二本の生産ライン。ICE車ラインは主力ピックアップのHILUX、SUVのFORTUNER、さらに本格オフローダーのLAND CRUISER FJを組み立てる。もう一本のEV専用ラインは、2025年11月10日に世界初公開された電動ピックアップ「Hilux Travo-e」の量産を担当する。
Travo-eはトヨタの第9世代Hiluxに新設された全電動グレードで、前後にモーターを備える四輪駆動仕様。欧州でのモデル名は「Hilux BEV」で、タイでは独自名称のTravo-eとして販売される。航続距離はWLTP基準で約240kmとされ、マレーシア向けの輸出仕様は257kmまで伸ばされている。
生産規模はニッチ車種の位置付けで、年間5,000台に抑えられる。このうちタイ国内販売は年500台で、残りの大部分はマレーシアなど東南アジア市場への輸出に回る計画。マレーシアではRM226,000で販売されており、タイのバンポー工場から完成車輸出(CBU)の形で現地ディーラー網に供給されている。
バンポー工場がICEとEVを同じ拠点でこなす体制を敷いたのは、トヨタの「マルチパスウェイ戦略」の具体例でもある。電動化を一足飛びに全面移行するのではなく、既存のピックアップ需要に応えつつ段階的にBEVを広げていく形で、市場動向に合わせてラインの比率を調整できる柔軟性を持たせている。
日本車メーカーのタイ生産拠点では、中国系EVメーカーによる組立工場の拡大が続いており、競争環境の変化が大きな論点となっている。そうした中で、トヨタがHiluxベースの電動ピックアップをバンポーで量産する体制に入ったことは、日本勢の電動ピックアップ戦略の試金石となる。







