タイ公衆衛生省の伝統代替医学局(DTAM)が22日、全国のライセンス大麻店をGIS(地理情報システム)で一覧監視する仕組みを本格稼働させた。副局長テワン・タネーラート博士が発表したもので、合法店舗の位置、営業状況、在庫管理を地図上で一元把握し、医療用目的への限定を徹底する狙いがある。
背景にあるのは、タイが2022年に大麻を麻薬リストから外した後、観光客向けの娯楽販売店が急速に乱立した反動だ。バンコクのシーロムやパタヤの観光街を中心に「ディスペンサリー」を名乗る店舗が1万8,000軒を超え、制度の想定を大幅に超える事態となっていた。
風向きが明確に変わったのは2025年6月25日、公衆衛生相ソムサック・テープストゥティン氏が娯楽目的の大麻使用を再び犯罪化する省令を公布したときだった。販売や購入には医師・薬剤師・歯科医、または認定された伝統医が発行する30日以内有効の処方が必要になった。
店舗側に課された条件も厳格だ。合法営業を続けるには、登録された伝統医または医療従事者を常駐させる必要があり、許可更新や書類整備が追いつかない業者は次々に姿を消している。2026年2月時点で1万8,433店あった合法店舗のうち7,297店が閉業し、残りはおよそ1万1,136店まで縮小した。
新たに動き出したGIS監視はこれらの店舗を地図上でピン留めし、衛星写真・住所・業者情報と紐づけることで「紙の許可証だけある幽霊店舗」を洗い出す役割を担う。無許可の販売や観光客向けの看板のみの店を特定しやすくなり、違反があれば所轄の警察と連携して摘発する流れが組まれた。
旅行者や在住外国人にとっては、バンコクのディスプレイに並ぶドライハーブを「誰でも処方ナシで買える」という風景は過去のものになりつつある。医師の処方がない状態で大麻を所持・使用すれば、タイの麻薬関連法に抵触する恐れがあり、観光ビザでの入国者も例外にはならない。
一方、医療用の道は今回の厳格化で整理された形だ。慢性疼痛やがんの補助療法、てんかん治療などを目的に、信頼できる医師を通じて処方を受けるルートは残されている。タイ駐在の日本人のなかには慢性疾患で医療大麻を活用したい層もおり、そうした利用者にとっては「正規医療としての使い方」が明確になったとも言える。
2022年の脱犯罪化から4年、タイの大麻政策は「産業と観光の目玉」から「医療制度の一部」へと軌道修正が進んでいる。観光で来る日本人も、長期滞在する駐在員も、街角の看板を鵜呑みにせず、処方と合法店舗の見分け方を押さえたうえで関わることが改めて重要になる局面に入った。