タイ公衆衛生省パッタナー・プロムパット大臣が5月11日、上院本会議で「タイには大麻自由化(ガンチャー・セリ)政策は存在しない」と明言した。「販売・吸引が確認された場合は即時逮捕」「大麻・ヘンプ規制法案を急いで施行する」と強調。現在も全国に約1万2,000店舗の大麻ディスペンサリーが営業しているが、2026年に5,000-6,000店、2027年に4,000-5,000店が次々と免許失効する流れにある。タイ大麻ビジネスは、規制強化と縮小局面に入っている。
事案は5月11日の上院本会議。モンコン・スラサッチャ上院議長が議事を進める中、パリンヤー・ウォンチェドクワン上院議員が「タイの大麻自由化政策の現状と社会影響への対応」を質問。これに対しパッタナー大臣が答弁する形で、政府の最新姿勢が公表された。
大臣の主要な答弁は3点だ。第一に、現在の政策は「自由化(セリ)」ではなく、医療用・研究用に限定された規制下での運用である。第二に、無許可での販売・所持・吸引は即時逮捕の対象。第三に、新たな「大麻・ヘンプ法案」を急ピッチで作成・成立させ、栽培源の管理から販売段階まで一貫した法規制を確立する。
数字面の動向は劇的だ。公衆衛生省は2569年(2026年)に「規制ハーブの研究・輸出・販売・加工許可省令第2版」を施行し、既存の約12,000店舗の大麻ディスペンサリー(小売店)に対して許可制を再徹底した。免許失効スケジュールは以下の通り:
- 2569年(2026年):5,000-6,000店が免許失効
- 2570年(2027年):4,000-5,000店が免許失効
- 2571年(2028年):残りの店舗が順次失効
タイの大麻自由化は、2022年6月にプラユット政権下で実現し、世界で最も寛容な政策として国際的に注目された。バンコク・パッタヤ・プーケット等の観光地では、大麻ディスペンサリーが急速に拡大し、観光客向けの大麻ツアー・カフェ・ショップが乱立。一方で、青少年への普及・運転中の使用・近隣諸国(マレーシア・シンガポール)への密輸など社会的課題も顕在化。アヌティン政権下では、政策方向の転換が段階的に進められてきた。
新法案の内容は、医療目的の使用許可、栽培者の登録制、販売店舗の限定、青少年への販売禁止、公共空間での使用禁止、運転中の使用刑事罰など、規制を大幅に強化する内容となる見通し。施行時期は2026年内が目標とされる。
タイ在住の日本人駐在員にとって直接的な接点は限定的だが、注意すべき点がある。第一に、タイで購入・所持した大麻製品(食品・飲料含む)を日本に持ち込めば日本の大麻取締法違反となり処罰対象。第二に、運転中の大麻使用は、新法案下で刑事罰の対象となる。第三に、子供連れで観光地を歩く際は、大麻ディスペンサリーの近くで匂いに触れる可能性があるため、店の前を避ける動線取りが望ましい。
タイの公衆衛生分野では、5月11日に新型コロナのコウモリ陽性確認、ハンタウイルス監視強化など、感染症対策と並行して薬物・ハーブ管理も重要な政策課題となっている。