タイ国家感染症委員会が、ハンタウイルスを感染症法に基づく「危険感染症」に正式指定するための研究を承認した。重症例で致死率30〜40%という高い数字や、国際旅行との関連性が決め手だ。タイ国内ではまだ患者報告がなく、当局は「総体的なリスクは低い」「市民はパニックの必要はない」と強調しているが、空港などでの監視は前倒しで強化される。
タイ国家感染症委員会、ハンタウイルスを「危険感染症」指定の研究を承認
タイ国家感染症委員会は5月8日、ハンタウイルス感染症を感染症法における「危険感染症(Dangerous Communicable Disease)」のカテゴリーに正式指定するための研究を承認した。指定そのものはまだ決定段階で、専門家チームによる評価作業が進行中だ。委員会はウイルスの重篤性、米地域などでの致死率の高さ、国際旅行を介した持ち込みリスクを総合的に勘案し、警戒レベルを一段引き上げることを決めた。
重症例で致死率30〜40%、感染症法での管理強化が狙い
重症例での致死率は30〜40%とされ、米州での歴史的記録では30〜50%に達した時期もあった。2025年のデータでは約25.7%に低下したものの、急性呼吸器症候群を起こすタイプは依然として致命的だ。感染症法の危険感染症に指定されれば、医療機関に対する報告義務、検体の追跡、患者の隔離、接触者の追跡などがより強い権限のもとで実施できるようになる。タイ当局はその準備として、空港・港湾での発熱者監視や、リスク地域からの帰国者への検査体制を整える方針だ。
タイ国内患者なし、オランダ船MV Hondius関連の国際旅行リスク
現在世界で確認されている感染事例はオランダの探検クルーズ船「MV Hondius」で発生した集団感染で、乗船者には複数国籍者が含まれていた。タイ国内にはまだ患者の報告がなく、当局は感染がコロナのように広範に広がる性質ではない点を強調している。一方で、潜伏期間が最大6週間に及ぶことから、感染した乗客が他国で発症するリスクは残されており、空港経由での持ち込みを抑える体制が必要とされている。
国際出入国地点で監視強化、市民向けは齧歯類との距離が予防策
タイ当局は国際出入国地点での監視を強化するとともに、市民へは過度な警戒よりも生活レベルでの予防を呼びかけた。ハンタウイルスは齧歯類(特にネズミ)の尿、糞、唾液を含むホコリの吸入で感染するため、廃屋・倉庫・物置などの掃除をする際にはマスクと手袋を着用し、十分な換気を確保することが基本になる。在タイ日本人にとっては、長期間使われていなかった別荘や郊外の物件を借りる際の清掃時、農場・牧場での作業時、ペットの寝室を整理する際などが具体的なリスク場面だ。COVID-19のような呼吸器感染症とは性質が異なり、日常的な飛沫感染を心配する必要はないとされる。