タイ中央銀行が、2026年の経済成長率の見通しを引き上げた。新たな予測は前年比2.0%で、これまでの1.5%から上方修正された。4,000億バーツ(約2兆円)規模の景気刺激策や、底堅い輸出が経済を押し上げると見込む。長く力強さを欠いてきたタイ経済にとって、明るい材料となる。
GDP見通しを1.5%から2%へ引き上げ
タイ中銀のウィタイ・ラタナコーン総裁によると、2026年の成長率予測は従来の1.5%から2.0%へと引き上げられた。政府の刺激策の効果が想定以上に表れていることや、世界経済の不透明さのなかでも輸出が底堅く推移していること、国内需要の高まりなどが理由だという。
輸出の伸びについても、従来の8.1%増から12〜13%増へと大幅に上方修正された。一方、2027年の成長率は1.7%と、いったん勢いが鈍るとの見立ても示されている。
タイの成長率は、近年ベトナムやフィリピンといった周辺国が5〜6%台の成長を続けるなかで、1〜2%台と低迷してきた。今回の2.0%への引き上げも、力強い回復というより、低調だった景気がようやく底を脱しつつある段階を映したものといえる。それでも、下方修正が続きがちだった近年の流れからすれば、前向きな転換点ではある。
4,000億バーツの刺激策と好調な輸出が支え
成長を後押しする柱の一つが、政府が打ち出した4,000億バーツ規模の景気刺激策である。「タイ助けタイ・プラス」と名付けられたこの政策は、借入を財源とするもので、国内消費の喚起をねらう。中銀は、この刺激策の効果が実体経済に着実に波及していると評価している。
輸出の堅調さも、楽観的な見通しを支える要因だ。米国の関税政策など世界経済には不確実性が残るものの、タイの輸出は予想を上回るペースで伸びている。政府支出の継続とあわせて、内需と外需の両面から景気を下支えする構図となっている。
物価は10月に5.2%へ、政策金利は据え置き
一方で、物価の動きには注意が必要だ。2026年の物価上昇率は年平均でおよそ3%と見込まれるが、エネルギー価格の一時的な高騰やエルニーニョによる価格圧力で、10月には5.2%まで跳ね上がると予測されている。2027年には1.4%程度まで落ち着く見通しだ。10月の5.2%という水準は、食料品や日用品の値段に跳ね返り、家計の負担となりうる。中銀は一時的な要因によるものとみているが、暮らしの実感としては痛みを伴う。
こうしたなか、中銀は政策金利を1.0%に据え置いている。成長を支えつつ物価の動きを見極める、慎重な姿勢がうかがえる。なお、2026年4月の経常収支は燃料の輸入を背景に赤字となっており、世界経済の不透明さとあわせて先行きのリスクとして意識されている。