タイで医療大麻への締めつけが一段と強まっている。タイ伝統・代替医療局(DTAM)は最近数週間で全国1,200件を超える大麻関連の事業所を立入検査し、逮捕や営業許可の停止、不審物の押収に踏み切った。大麻を「医療目的に限る」とする政府方針を徹底する動きで、すでに全国の大麻店のおよそ4割が店を畳んだとされる。観光客の娯楽利用を当て込んだ「解禁ブーム」は、明確に終わりに向かっている。
数週間で1,200件超を検査
DTAMによる検査は1,247カ所に及び、違反が見つかった店舗には逮捕、許可停止、不審物の押収といった処分が下された。背景には、医療用をうたいながら実際には誰にでも売る店が後を絶たないことへの当局の警戒がある。6月11日の摘発では、ノンタブリー県パクレットで英国向けに発送される直前だった約1.255キロの大麻が押収された。海外への密輸の温床になっているとの懸念も、取締り強化を後押ししている。当局は苦情の調査や立入検査を今後も続け、法令順守を徹底する構えだ。
処方箋なしでは買えない
現在のタイでは、大麻は医療・健康目的に限って認められ、娯楽目的の使用は違法とされる。販売店は許可を持っていても、有効な処方箋を持たない客に売ることはできない。処方箋は最長30日分で、店舗は受け取った処方箋を1年間保管し、DTAMや警察の求めに応じてただちに提示しなければならない。かつて街角の店で気軽に買えた状態とは様変わりし、購入には医師の診断という関門が挟まることになった。
罰則強化と書類管理の義務
公衆衛生省は、大麻を「管理ハーブ」と位置づけた2025年のルールに違反した事業者への罰則を強化した。仕入れ先や在庫を届け出る書類(ポートー27)や、使途を記録する書類(ポートー28)の不備には30日の営業停止、違反を繰り返せば許可の取り消しもありうる。違反内容によっては最大2万5,000バーツ(約12万円)の罰金や3カ月以下の禁錮が科される場合もある。店舗にとっては、日々の記録と書類の管理そのものが事業継続の条件になった。
「解禁ブーム」から医療限定への揺り戻し
タイは2022年に大麻を麻薬指定から外し、東南アジアで突出して自由な市場が一気に広がった。バンコクや観光地には大麻ショップが乱立し、外国人観光客を当て込んだ娯楽利用も事実上黙認されてきた。しかし健康被害や青少年への影響を心配する声から反動も大きく、2025年6月に医療限定へかじを切って以降、全国に1万8,000店以上あった大麻店は、2026年初めまでに約4割が閉店したと伝えられる。残るおよそ1万1,000店は、医療の枠組みのなかで生き残りを探ることになる。タイの大麻政策は、わずか数年で「解禁」から「再規制」へと大きく揺れ動いている。
