タイ東北部ウドンタニ県の食堂で起きた集団食中毒で、保健当局は、原因となった物質が亜硝酸塩だったと確認した。当局によれば、汚染されたスープを3杯食べれば命に関わる恐れがあるという。塩の代わりに使われた「謎の白い粉」の正体が、強い毒性を持つ物質だったことになる。
確認された毒物は亜硝酸塩
当局は、患者の症状や検査の結果から、麺のスープに混入していた物質が亜硝酸塩だったと結論づけた。当初は症状から疑いが持たれている段階だったが、あらためて毒物として裏づけられた形だ。 その毒性は強い。当局は、汚染されたスープをおよそ3杯口にすれば、死に至る恐れがあると警告している。実際、6月8日にこの食堂で麺を食べた客や、店主の親族らが、吐き気やめまい、下痢、嘔吐、呼吸困難といった症状を訴えて病院に運ばれた。
ゴミ山で拾われた「白い粉」
事件が起きたのは6月8日、ウドンタニ県ノンナカム地区の食堂だった。店主のもとには数日前、息子が小さな袋に入った白い粉を2袋持ち込んでいた。当日の朝、塩を切らしていた店主は、その粉を塩の代わりに使ってスープを仕込んだという。 この粉は、ゴミの山から拾われたものだったと伝えられている。見た目が塩によく似ていたことが、悲劇につながった。13人が病院に搬送され、その後も数人が入院を続けて経過を見守られていた。
亜硝酸塩とは何か、なぜ危険なのか
亜硝酸塩は、本来はハムやソーセージといった加工肉の発色や保存に、ごく少量だけ使われる食品添加物だ。法律で使用量が厳しく定められており、適切に使えば問題はない。 ところが、大量に摂取すると一転して強い毒になる。体内で血液中のヘモグロビンに作用し、酸素を全身へ運ぶ働きを妨げてしまうためだ。その結果、唇や指先が青紫色になり、重い場合は酸素不足で命を落とすこともある。見た目が食塩とほとんど区別できないだけに、ラベルのない白い粉を安易に食品へ使うことの怖さを、今回の事件はあらためて突きつけている。
治療と、繰り返される「塩の取り違え」
亜硝酸塩による中毒には、メチレンブルーと呼ばれる薬剤が解毒に用いられることが知られている。早い段階で治療を受けられれば回復は見込めるが、摂取した量によっては命に関わるだけに、初期対応の速さが鍵を握る。今回も患者は病院で経過を観察され、容体は落ち着いていたと伝えられている。 タイの地方では、市場や露店で量り売りされる調味料や、用途が書かれていない白い粉末が出回ることがある。塩や砂糖と見た目がよく似た化学物質を取り違える事故は、これまでも各地で起きてきた。ラベルのない粉を食品に使わない、出どころの分からない調味料を口に入れない、という基本の大切さを、今回の事件はあらためて突きつけている。
