2026年6月28日に投票が予定されているバンコク知事選挙で、経済党(プラチャート / Economic Party)が元バンコク警察司令官の「ビッグ・ヨム」ことシャン・テート・セサウェット警察中将(พล.ต.ท. = Pol.Lt.Gen.)を党公認候補として擁立する方針が5月17日明らかになった。シャン・テート氏は警察キャリアの最終職としてバンコク警察司令官を務め、退職後はタイ忠誠党(Thai Raksa Party)の初代書記長、アサウィン元バンコク知事の選挙対策本部長などを歴任した叩き上げの警察出身者。再選を目指す現職チャチャート・シティプン氏(無所属)、民主党のアヌチャ・ブラパチャイシ氏に続く第3の主要候補擁立で、保守・治安重視のスタンスを打ち出す。
「ビッグ・ヨム」シャン・テート警察中将とは
シャン・テート氏のニックネーム「ビッグ・ヨム」はタイ警察界で広く通用する呼称だ。タイ警察学校36期生(นรต.36)の出身で、同期にはジャクラティップ・チャイチンダ前国家警察庁長官(「ビッグ・パパ」)がいる。
警察キャリアの主要ポストは次のとおり。
- セキュリティ部副司令官(พล.ต.ต. = 警察少将時代)
- 麻薬対策警察副司令官
- バンコク警察副司令官
- 地方警察第7部門司令官(タイ西部・サムットプラカーン地域)
- 地方警察第1部門司令官(タイ中部)
- バンコク警察司令官(ผบช.น. = Metropolitan Police Bureau Commissioner、退職前の最終職)
退職後は副バンコク知事のポストも務めており、バンコク行政・治安の両面に精通している経歴を持つ。
政治キャリア—タイ忠誠党から経済党へ
退職後のシャン・テート氏は政治の世界へ転身した。2022年1〜3月、結成されたばかりのタイ忠誠党(Thai Raksa Party)に初代書記長として就任。同党は王室・伝統重視の保守政党として位置づけられていた。
その後タイ忠誠党を離脱し、経済党(プラチャート / Economic Party)に移籍。経済党は中道保守の経済成長重視政党で、シャン・テート氏は治安・行政経験者として党内で重視されてきた。今回のバンコク知事選擁立は、経済党にとって都市部での存在感確立の重要な布石となる。
経済党擁立の経緯
地元紙によれば、経済党は当初、別の候補「ビッグ・ペー」(公開済みの愛称で本名は別途)を擁立する予定だった。しかしビッグ・ペー氏が知事選辞退を表明したため、急遽シャン・テート氏に白羽の矢が立った形だ。
シャン・テート氏は2022年バンコク知事選では、アサウィン・クワーンムアン元知事の選挙対策本部長を務めた経歴がある。アサウィン氏は当時、バンコク知事選で2位に終わったが、シャン・テート氏はそのときの選挙ノウハウと組織を保持しているとみられる。
バンコク知事選2026の三つ巴構図
5月17日時点での主要候補は次のとおり、三つ巴の構図が固まりつつある。
第1に、現職チャチャート・シティプン氏(無所属)。5月18日に正式辞任して即日再立候補表明予定。5月10日スワン・ドゥシットポール世論調査で56.7%の支持を獲得。
第2に、民主党のアヌチャ・ブラパチャイシ氏。元政府報道官として知名度があり、5月16日に正式擁立発表済み。
第3に、経済党のシャン・テート・セサウェット氏(「ビッグ・ヨム」)。元バンコク警察司令官として治安・行政経験で勝負。
その他、医師パッカワット・チャイヴィワット氏(無所属、「ドクター・ジョー」、世論調査18.9%)、人民党(People's Party、前進党後継)の独自候補なども擁立予定。候補者登録期間は5月28日〜6月1日。
関連背景
バンコク知事は日本人駐在員家庭の生活インフラ(PM2.5対策・洪水対応・交通信号機運用・廃棄物処理)の最高責任者だ。今回の経済党シャン・テート氏擁立で、選挙戦の論点が次の3軸に絞られる見通しだ。
第1に、「治安強化派 vs 生活改善派」。シャン・テート氏は警察出身として治安・反汚職・取締り強化を打ち出す可能性が高い。チャチャート氏は前任4年で大気汚染モニタリング・夜の遊歩道整備など生活改善で評価を得た。
第2に、「保守派 vs 中道派」。シャン・テート氏(経済党・保守)とアヌチャ氏(民主党・保守)が保守票を分け合う可能性。チャチャート氏は中道〜リベラル寄りで人民党と票が重なる。
第3に、「現職実績 vs 新顔ブランド」。チャチャート氏の知名度・実績は他の追随を許さず、複数の保守候補で票が割れる構図がそのまま再選の追い風になりかねない。