2026年6月28日に投票が行われるバンコク知事選挙に向けて、民主党(プラチャティパット)が5月16日、元政府報道官のアヌチャ・ブラパチャイシ(通称ジェームズ、59)を党公認候補として擁立すると正式発表した。スローガンは「バンコク、天の都 and more 便利・清潔・快適」。再選を目指す現職チャチャート・シティプン氏(無所属)が世論調査で5割超の支持を得る中、民主党にとっては2022年知事選での歴史的大敗からの巻き返しを賭ける戦いになる。バンコク在住の日本人にとっても、PM2.5・洪水・交通対策の方針が直接生活に響くため、対立軸の整理は重要だ。
アヌチャ・ブラパチャイシとは何者か
アヌチャ氏は1967年1月23日生まれの59歳、ニックネームは「ジェームズ」。タイ政界での経歴は古く、若手時代から民主党に所属し、小選挙区制度下のバンコク選挙区で当選経験がある。2011年には2期目の下院議員(バンコク選出)に当選した。プラユット政権下では政府報道官・首相補佐官報道官を歴任し、メディア露出が多かったため一般タイ人の認知度も比較的高い。
私生活では、妻スダラット・ブラパチャイシ氏が元バンコク知事のクリッサダ・アルーンウォン・ナ・アユタヤ氏の娘で、バンコク政治の家系とも縁が深い。今回の知事選挑戦は、民主党バンコク部門の再建を期待される人選という位置づけだ。
知事選2026の日程
バンコク知事選挙2026は以下のスケジュールで進む。
- 5月21日:チャチャート知事の任期終了(本人は5月15日に辞任、即時再立候補表明)
- 5月28日〜6月1日:候補者登録
- 6月28日(日)8:00〜17:00:投票
- バンコク市議会(BMA)議員選挙、パタヤ市長選挙も同日実施
民主党はバンコク50区分の市議会議員候補も同日にあわせて公開しており、知事と市議のセット選挙で「民主党の党勢」を問う形にしている。
アピシット代表「知識・能力・誠実」を保証
アピシット・ウェチャチワ元首相が民主党代表として記者会見に登場し、アヌチャ氏を「知識・能力・誠実・廉潔」を備えた候補と紹介。同席したのはスコンタイ・パッタイヤクン副代表(バンコク担当)、元財務大臣のコーン・チャティクワニチ氏、カラディ・リアオパイロート副代表、チャイワット・バンナウッ事務総長ら。さらに過去の民主党バンコク知事政権下で副知事を務めたタヤ・ティーパスワン氏ら、党OB級が並び、党を挙げての擁立体制を示した。
民主党は2022年の前回知事選で、候補のスラチャート・ライムシラ氏が約9.6%の得票で4位に終わり、チャチャート氏(52.4%)に5倍以上の差をつけられている。バンコクは2019年下院選以降、前進党・人民党の支持基盤に変わり、民主党の地盤地ではなくなったとの分析が定説だ。
チャチャートとの対決構図、野党側は分裂気味
5月10日に発表されたスワン・ドゥシットポールの世論調査では、再選を狙うチャチャート氏が56.7%でトップ、医師のパッカワット・チャイヴィワット氏(通称ドクター・ジョー、無所属新人)が18.9%で2位、その他候補は1桁台にとどまる。アヌチャ氏の名前はまだ世論調査に登場していない。
野党側はチャチャート氏に対抗する候補が割れている。人民党(People's Party、前進党の後継)も独自候補を立てる見通しで、民主党アヌチャ氏とは保守・リベラル両軸で票を取り合う可能性が高い。チャチャート氏の組織票・現職効果がそのまま温存される場合、再選はほぼ確実とみる地元紙の分析が多い。
関連背景
バンコク知事はBMA(バンコク都庁)の年間予算約9兆ドン超を握り、(1)PM2.5・大気汚染対策、(2)洪水・排水・運河管理、(3)交通インフラ(信号機・バス路線・歩道)、(4)廃棄物処理、(5)公園・公共施設、(6)違法占拠・無許可建築の取締りなど、駐在員家庭の生活インフラ全般を担当する。在タイ日本人に投票権はないが、知事の方針次第でPM2.5の警報基準、雨期の冠水対応、Grab/タクシーの路線整備などが変わるため、選挙結果は日常生活に直結する。チャチャート氏は前任4年間でPM2.5モニタリングアプリ・夜の街遊歩道整備で評価を得てきたが、洪水対策の予算不足や運河浄化の遅れも指摘されている。