タイ北部ランパーン県の商業ビルで5月16日、違法ビットコインマイニング工場が摘発された。タイ地方電力公社(PEA)と警察が裁判所の捜査許可状を取得して建物に踏み込み、電力盗難による被害は300万バーツ(約1,400万円)超と推定されている。タイでは2025年末から、中華系詐欺ネットワークの資金源と疑われる大規模採掘工場の摘発が相次いでおり、PEA職員自身が共犯として立件される不祥事まで発生している。在タイ日本人が住む工業地帯やシリアル工業地区でも他人事ではなく、街中の地味な商業ビルが「実は地下マイニング工場」というケースが現実に出てきている。
5/16ランパーン、商業ビルでの摘発
タイ地方電力公社(PEA)と地元警察が裁判所許可状を執行し、ランパーン県内の商業ビル1棟で違法ビットコイン採掘設備の押収を実施した。電力使用量が異常に多いとの通報が捜査の端緒となり、PEAが配電系統への不正接続を確認した上で警察と合同で捜査に踏み切った形だ。被害推定額は300万バーツ(約8.1万ドル相当)超。容疑者数・押収機器台数・運営期間の詳細は5月16日午後時点で当局公式発表待ちの段階だが、PEA側は他県の類似事例と「同一の手口」と説明している。
違法マイニングの典型的な手口
タイで摘発が相次ぐ違法ビットコイン採掘工場には共通の特徴がある。
採掘機(ASIC)は冷却用の水冷システムと防音材を備えたコンテナや工場内部屋に隠蔽され、外観からは中身がわからない。配電系統は電力メーターを迂回するように改ざんされており、メーター上の使用量と実際の消費量に大きな乖離が生じる。一般的な工業ビル・倉庫・住宅・商業施設に紛れ込ませることで、近隣からは「普通の事業所」にしか見えない。摘発のきっかけは多くの場合、近隣の電圧低下・停電苦情や、PEAの異常使用量アラートだ。
2025年12月「Bitforge作戦」が転機
タイ特別捜査局(DSI)とPEAは2025年12月、合同作戦「Bitforge Operation」を実施した。サムットサーコーン県内の工場3棟(後に6か所に拡大)とウタイターニー県1か所で違法マイニング工場を一斉摘発し、押収したマイニング機器は3,642台、評価額は約2億7,000万バーツ(約12.6億円相当)。関連電気機器を含めると総額3億バーツ規模になった。
DSIによれば、この一連の工場で電気代を盗まれた国家損失は推定5億バーツ。さらに資金洗浄ルートを追跡したところ、ミャンマー拠点の中華系詐欺コールセンター・人身売買ネットワークと関係しており、流通した資金は累計50億バーツ規模に達したとされる。ビットコインマイニングは詐欺収益の「クリーンな現金化」手段として使われていた。
PEA職員自身が立件される事案も
タイ警察は2026年初頭、PEA職員らを電力盗難ネットワークの共犯として摘発した。50億バーツ規模の被害があったとされ、不正契約・メーター改ざん・電力使用量の偽装報告にPEA内部の人間が関与していた構図が判明している。さらに別の事案では、PEA職員の便宜供与で違法採掘工場が運営されたとして、DSIから国家汚職取締委員会(NACC)へ事件記録が送付されている。
関連背景
ランパーンは北部の中核県だが、違法マイニング工場はバンコク近郊・東部経済回廊(EEC)・サムットサーコーンなど、駐在員が居住・通勤する地域でも摘発されている。家庭・オフィスで電圧が下がる、近所で原因不明の停電が増える、配電盤が異常発熱するなどの兆候は、近隣の違法マイニング工場が原因の可能性がある。日本人が借りるコンドミニアム・一軒家でも、隣接区画でこうした工場が稼働していれば、電力品質の低下・火災リスクが現実問題として降りかかる。違和感を感じたらPEAホットライン1129または近隣警察に通報するのが正攻法だ。