バンコクの都市鉄道(電車)の運賃が、2027年に全路線で17〜45バーツ(約80〜215円)に統一される見通しとなった。運輸省のシリポン副大臣が明らかにしたもので、これまで運営会社や路線ごとにばらばらだった運賃を、MRTA(タイ大量輸送公社)が一元的に管理する形に変える。乗り換えのたびに運賃がかさむ負担を和らげ、通勤・通学の費用を抑える狙いがある。
路線ごとにばらばらだった運賃
バンコクの電車は、BTS(スカイトレイン)やMRT(地下鉄)をはじめ、複数の事業者がそれぞれ運営し、路線ごとに運賃が決められてきた。そのため、違う路線に乗り換えると初乗り運賃が二重、三重にかかり、目的地によっては片道で60バーツを超えることも珍しくない。毎日通勤で使う人にとっては、この積み重なる運賃が重い負担になっていた。政府は2023年から、国鉄レッドラインやMRTパープルラインで「20バーツ均一」を導入し、対象路線では運賃を大きく引き下げてきた。ただ、バンコクの鉄道網は十数路線、総延長およそ250キロまで広がり、事業者も路線ごとに異なるため、全路線をまたいだ運賃の統一には至っていなかった。
全路線をMRTAの一元管理に
シリポン副大臣によると、運輸省は緑、青、紫、赤、ピンク、黄など、いわゆる各「色」で呼ばれるすべての路線を、MRTAが一括して管理する案を閣議に諮る。運営主体を一つにまとめることで、路線をまたいでも17〜45バーツの範囲で乗れるようにする。料金に上限が設けられれば、長い距離を乗り継いでも、これまでより安く移動できるようになる見込みだ。実現すれば、2027年には市内のほぼどこへでも、わかりやすい運賃で電車移動ができるようになる。
共通乗車券と債務の整理が課題
一元化に向けては、なお片づけるべき課題が残る。路線をまたいで一枚で使える共通乗車券の仕組みづくりや、各路線がこれまでに抱えてきた建設・運営の債務をどう整理するかだ。運営権(コンセッション)の条件が事業者ごとに異なるため、調整は単純ではない。共通乗車券では、銀行のタッチ決済(EMV)対応カードを改札にかざして複数路線で使えるようにする構想も進んでおり、専用カードを持たなくても乗れる形が想定されている。運輸省は来週にも、こうした点の協議を進めたい考えを示している。
生活費を左右する通勤の足
バンコクでは渋滞が激しく、電車は多くの人にとって欠かせない通勤の足になっている。一方で、運賃の高さから利用をためらい、バイクやバスを選ぶ人も少なくなかった。運賃が下がって乗り継ぎの負担が消えれば、家計の交通費が軽くなるだけでなく、車やバイクから電車への移行が進み、渋滞や大気汚染(PM2.5)の緩和にもつながると期待される。観光や出張でバンコクを訪れる人にとっても、移動のしやすさと費用の見通しやすさは大きな魅力になる。ただし、運賃を抑えるぶんは国の負担や事業者への補填でまかなう必要があり、その財源をどう確保し続けるかが、制度を長く続けられるかどうかを左右する。電車運賃の引き下げは、物価高に苦しむ家計を助ける看板政策の一つとして、政府が力を入れてきたテーマでもある。