タイの航空大手タイ国際航空(THAI)で、創業66年で初めて女性パイロットが旅客便を操縦した。副操縦士を務めたのは、パンナトーン・タンルンルアンチャイさん(愛称バム)。バンコク発ハノイ行きのTG564便で、エアバス機の運航にあたったと報じられた。男性が大半を占めてきた操縦室に、新たな一歩がしるされた。
66年目の「初」
タイ国際航空は1960年に設立された、タイを代表する航空会社だ。報道によると、女性が同社の旅客便でパイロットとして操縦桿を握ったのは、これが初めてだという。タイでは格安航空会社などで女性パイロットが活躍する例もすでにあるが、長い歴史を持つ国の看板航空会社での「初」は、大きな節目として受け止められている。同社は2020年に経営不振から会社更生の手続きに入り、人員や路線の見直しを進めて立て直しを図ってきた。再建が一段落し、運航を本格的に立て直しつつあるなかで届いた、明るい話題でもある。
まだ少ない女性パイロット
世界的に見ても、旅客機のパイロットに占める女性の割合は5%前後にとどまるとされ、男性が圧倒的に多い職業だ。背景には、長期間にわたる訓練と高額な費用、早朝や深夜にも及ぶ不規則な勤務、家庭との両立の難しさなどがあると指摘されてきた。資格そのものに性別の制限はないが、「パイロットは男性の仕事」という固定観念が、女性の挑戦をためらわせてきた面もある。近年は各国の航空会社が女性の採用や育成に力を入れ始め、機長や副操縦士に女性が就く「初」の知らせも、少しずつ各地で増えている。世界的にパイロット不足が指摘されるなか、性別にとらわれずに人材を育てることは、航空業界にとっても人手の裾野を広げる意味を持つ。
タイでも進む女性の進出
タイでも、空の世界で活躍する女性は少しずつ増えている。格安航空の大手では大型機エアバスA330の女性パイロットが誕生し、軍でも初の女性パイロットが任務に就くなど、これまで男性が中心だった分野に女性が踏み込む動きが続いてきた。今回のタイ国際航空の「初」も、そうした大きな流れのなかに位置づけられる。医師や法曹などと同様に、専門職で実力を発揮する女性が増えるなかで、操縦室もその例外ではなくなりつつある。
続く人への道しるべに
一人の女性が操縦室に入ることは、それ自体が後に続く人への道しるべになる。性別にかかわらず実力で評価される環境が広がれば、空を仕事場に選ぶ女性も増えていくはずだ。タイを代表する航空会社が刻んだ今回の一歩が、パイロットを志す次の世代の背中を押すことになるかもしれない。日本との間にも多くの路線を持つ航空会社だけに、機内で女性機長や副操縦士のアナウンスを聞く機会も、これから増えていきそうだ。