タイが、先進国を中心に構成される経済協力開発機構(OECD)への加盟を2028年までに実現させる目標を掲げ、動きを加速させている。タイのシーハサック外相は、パリで開かれるOECDの閣僚理事会に出席し、経済成長につながる産業政策のあり方などを各国の高官と話し合う。現在、東南アジアにOECDの加盟国はなく、実現すればタイは地域の先駆けとなる。
2024年に始まった加盟プロセス
タイのOECD加盟は、2024年に本格的に動き出した。OECDは同年6月にタイとの加盟交渉の開始を決め、7月には加盟に向けた「ロードマップ」を採択した。OECDは30を超える先進国などが集まり、経済政策や統計、ガバナンスの国際基準づくりを担う組織で、「先進国クラブ」とも呼ばれる。近年はコロンビアやコスタリカといった新興国も加盟しており、対象は欧米の先進国だけにとどまらなくなっている。東南アジアでは、タイとほぼ同時期にインドネシアも加盟プロセスに入っており、地域の新興国がそろって先進国基準を目指す流れができつつある。
25の委員会が法制度を点検
タイは現在、加盟に向けた技術的な審査の段階にある。2025年12月には最初の覚書を提出し、OECD側との本格的な対話が始まった。投資環境、金融市場、地域開発など25の専門委員会が、タイの法律や政策、慣行がOECDの基準にどれだけ合っているかを細かく点検していく。基準を満たすために、国内では法改正や制度改革が求められる場面も増えるとみられる。政府は副首相級を含む国家推進委員会を設け、省庁横断で加盟を後押しする構えだ。ただ過去には招請から加盟まで5〜7年を要した国もあり、作業量を考えると2028年という目標はかなり野心的な設定といえる。
加盟がタイにもたらすもの
OECD加盟は、単なる肩書きではない。透明性の高いルールや国際基準を取り入れることで、海外からの投資を呼び込みやすくなり、タイ経済の信頼性を高める狙いがある。一方で、税制や競争政策、汚職対策、労働、環境といった幅広い分野で、国際標準に沿った改革を迫られることにもなる。短期的には痛みを伴う見直しもあり得るが、政府は長い目で見た競争力の底上げにつながると見ている。先進国の仲間入りを目指す動きは、タイがこれからどんな経済を築こうとしているのかを映す試みでもある。
「先進国クラブ」入りが意味すること
OECDは加盟国の経済データを共通の物差しで比較・公表しており、その基準は投資家や格付け会社が国を評価するうえでの目安にもなっている。加盟は、タイが透明性や法の支配といった面で一定の水準にあると国際的に認められることを意味する。教育や医療、年金といった政策づくりでも、加盟国どうしの比較や助言を受けやすくなる。長く中所得国にとどまってきたタイにとって、加盟への挑戦は、より成熟した経済へ移ろうとする意思の表れでもある。