タイで生産されたトヨタのピックアップトラックが、本国の日本で売られている。新型「ハイラックス TRAVO(トラボ)」だ。タイの工場でタイの従業員の手によって組み立てられ、日本へ輸出されるという、これまでとは逆向きの流れである。しかも世界で最初に発売されたのは日本でも欧米でもなくタイで、2025年11月10日のことだった。日本での価格は498万円(約104万5千バーツ相当)からと、ピックアップとしては強気の設定になっている。
ハイラックス TRAVOとは何か
TRAVOは、トヨタの世界戦略ピックアップ「ハイラックス」の大幅改良版にあたる。内外装が刷新され、パワートレインは2.8リッターのディーゼルターボを基本に、バッテリーEV仕様も設定された。EV版は一回の充電でおよそ240km(WLTP)を走るとされ、商用ピックアップにも電動化の波が及び始めていることを示す。タイでは「Revo」「Champ」など複数のハイラックス系が販売されてきたが、TRAVOはその最新世代の顔という位置づけだ。注目すべきは発売の順番で、世界初公開と初発売の舞台に選ばれたのは日本でも欧米でもなく、タイだった。2025年11月にタイで先行デビューし、約半年遅れで日本に上陸した。タイがトヨタにとって単なる組立地ではなく、新型車を真っ先に問う重要市場になっていることがうかがえる。
タイの工場から日本へ「逆輸入」
TRAVOを生産するのは、バンコク近郊チャチューンサオ県にあるトヨタのバンポー工場だ。日本で販売される個体も、このタイの工場から運ばれてくる。トヨタにとってタイは数十年にわたりハイラックスなどピックアップの一大生産・輸出拠点であり、新興国向けの車台計画のもとでタイ製ハイラックスが世界各国へ送り出されてきた。タイは日本国外でも最大級のピックアップ生産拠点で、自動車はタイの主要輸出品目の一つだ。「アジアのデトロイト」と呼ばれるタイ自動車産業の屋台骨でもある。日本向けTRAVOの仕様は、シャークフィン型アンテナとヘッドランプウォッシャーを備え、内装は黒とミネラルグリーンを組み合わせた専用トーンでまとめられた。日本の基準や顧客の好みに合わせた手直しが加えられている形だ。
タイ市場が先導する世代交代
タイではピックアップトラックが最も売れる車種カテゴリーで、商用にも自家用にも使われる国民車的な存在だ。なかでもハイラックスは長年の定番で、新世代のTRAVOへの切り替えもタイ市場が先行した。タイで鍛えられ、タイで真っ先に市場の評価を受けた一台が、そのまま日本のユーザーのもとへ届く構図になっている。
日本での価格と販売目標
日本でのTRAVOは高グレード中心の構成だ。標準的な「Z」が498万円(約104万5千バーツ相当)、上級の「Z Adventure」は550万円とされる。トヨタは日本で月690台の販売を目標に掲げる。ピックアップとしては決して安くないが、悪路走破性と耐久性、そして無骨な存在感を武器に、アウトドアや商用、趣味のクルマとしての需要を狙う。
タイ製トヨタが日本を走る時代
タイから日本へ渡るトヨタは、TRAVOだけではない。同じくタイ製の「ランドクルーザー FJ」も、日本で約450万円(4,500,100円)で売り出されている。コンパクトな本格オフローダーとして注目を集めるモデルも、生産地はタイだ。かつては日本で造った車を新興国へ輸出するのが当たり前だったが、いまではタイで生産された車が日本の道を走る。タイの製造業が積み上げてきた実力と、トヨタにとってのタイ拠点の重みを、TRAVOの一台が静かに物語っている。





