タイ投資委員会(BOI)は、電気自動車(EV)関連の投資申請が累計で1377億バーツ(約6700億円)に達したと明らかにした。対象は198のプロジェクトにのぼり、完全なEV(BEV)からハイブリッド、電池や充電インフラまで、あらゆる技術と部品を網羅する。EVの生産と供給網でASEAN(東南アジア諸国連合)の中心地を目指すタイの動きが、数字にも表れてきた。
電池と車両生産に集まる巨額投資
BOIによると、投資の大きな柱となるのが電池の生産で、53事業で801億バーツが投じられる。完全なEV(BEV)の生産は21事業で410億バーツ、年間の生産能力は38万6000台に達する。このほか、電動バイクが16事業、電動バス・トラックが3事業、主要な部品の製造が42事業と続く。充電インフラでも、29のプロジェクトで55億バーツが投じられ、2万台を超える充電器(うち急速充電が7360台)が整備される計画だ。MHEVやHEV、PHEVからBEVまで、幅広い電動化技術がタイに集まりつつある。
販売も生産も急拡大
市場の伸びも著しい。2025年にタイで売れたEV(BEV)は12万301台で、前年から8割増えた。新車販売に占めるEVの割合は19.4%に達している。国内での生産はさらに急拡大しており、2025年のBEV生産は7万914台と、前年の9688台からおよそ6.3倍に膨らんだ。輸入に頼っていた段階から、タイ国内で作る段階へと、産業の重心が移りつつある。
「30@30」政策と各国メーカー
背景にあるのが、タイ政府の「30@30」政策だ。2030年までに、国内で生産する自動車の3割以上をEVにするという目標で、これに合わせてEV3・EV3.5と呼ばれる補助制度が用意されてきた。この枠組みのもと、中国・日本・欧州の18社が、すでにタイでEVを生産しているか、今後2年以内に生産を始めると表明している。中国系メーカーが先行するなか、トヨタやホンダなどの日系各社も、ハイブリッドを軸にしながらEVへの対応を進めている。
車産業の未来を左右する投資
タイは「アジアのデトロイト」と呼ばれる自動車生産大国で、ガソリン車の輸出拠点として長年栄えてきた。世界的なEVシフトのなかで、その地位を電動車でも保てるかどうかが、今回の大規模な投資の焦点となる。1377億バーツという数字は、タイが単なる組み立ての場にとどまらず、電池や部品まで含めた供給網ごと取り込もうとしていることを示している。雇用や関連産業への波及も見込まれ、EVをめぐる各国の綱引きのなかで、タイがどこまで存在感を保てるかが問われている。





