バンコクでコンドミニアムを初めて探した人は、たいてい一度は固まる。スクンビット、アソーク、トンローあたりは、家具付きで条件を絞り込む前から月2万バーツ(約9万7千円)が当たり前で、3万5千バーツ(約17万円)という強気の物件も珍しくない。ところが探す範囲を少し広げるだけで、BTSやMRTの駅に近いまま家賃を1万バーツ(約4万9千円)前後に抑えられるエリアは確かに存在する。タイの英字メディア、The Thaigerが、通勤の利便と安さを両立できる4地区を挙げた。
なぜ中心部のコンドはここまで高いのか
スクンビット通り沿いは、バンコクの中でも家賃が突出して高い。アソークやトンローの駅周辺は外国人や富裕層の需要が集中し、ワンルームでも月2万バーツを超える。中心部に近いプラヤタイやチャトチャック近辺でも、スタジオで1万1千〜1万6千バーツ、1ベッドルームなら1万5千〜2万3千バーツという水準だ。中心部で「駅近で快適」を求めると、家賃が生活費の大半を食ってしまう。逆に言えば、住むエリアを一つずらすだけで月々の負担は大きく変わる。実際の賃貸サイトを見ても、ドンムアンやウッタカート、パッククレットといった郊外寄りの駅周辺には、1万バーツを切るワンルームが点在している。
こうした郊外エリアが現実的な選択肢になった背景には、鉄道網の広がりがある。ピンクラインやパープルライン、エアポートレールリンクといった郊外路線が伸びたことで、かつては車がないと不便だった地区まで駅一本でつながるようになった。沿線にはそれを見込んだ手頃な価格帯のコンドの建設も進んでいる。鉄道が外へ延びるほど、駅近のまま家賃を抑えられる選択肢は増えていく。
タラートプルー、BTSでシーロムへ直通
チャオプラヤー川を渡ったトンブリー側にあるタラートプルーは、BTSシーロム線でシーロムまで乗り換えなしに出られるのが最大の強みだ。家具付きの1ベッドルームで月9千〜1万2千バーツ(約4万4千〜5万8千円)。近くにザ・モール・タープラがあり、最近はカフェやコワーキングスペースも増えてきた。地元向けの市場や食堂が残っていて、中心部より静かで渋滞も少ない。難点は、スクンビットやラマ9世エリアへ向かうには川を渡る分だけ余計に時間がかかること。シーロムやサトーンで働く人なら相性がいい。
バーンスー・タオプーン、2路線が交わる結節点
バーンスーからタオプーンにかけてのエリアは、MRTブルーラインとパープルラインが交わる乗り換え拠点だ。ラチャダーやシーロム方面へも、北のノンタブリー方面へも動きやすい。家具付き1ベッドルームの相場は月1万〜1万4千バーツ(約4万9千〜6万8千円)と、今回の4エリアでは高めだが、その分アクセスの良さは群を抜く。市場や数十年続く麺屋が並ぶ昔ながらの下町で、家賃以外の生活コストは低い。路地が狭く、ラッシュ時の渋滞が激しい点は覚悟しておきたい。プラナコーンやドゥシット、ヴィパーヴァディー方面へ通うなら候補に入る。
ミンブリーとラートクラバン、郊外で広さと安さを取る
とにかく家賃を抑えたいなら、郊外の2地区が候補になる。MRTピンクライン沿いのミンブリーは、家具付きで月5千〜7千バーツ(約2万4千〜3万4千円)。同じ家賃でも部屋が明らかに広く、食事も1食40〜60バーツで済むため、生活費そのものが下がる。エアポートレールリンク沿いのラートクラバンは月5千5百〜7千バーツ(約2万7千〜3万4千円)で、スワンナプーム空港やマッカサン、アソークへ一本で出られる。どちらもラッシュ時は中心部まで1時間を超え、駅から自宅までバイクタクシーに頼る場面も多い。空港勤務や東部のEEC方面で働く人、在宅勤務が中心の人に向いている。
「駅近」を鵜呑みにしない
4エリアに共通する注意点もある。物件情報の「駅近」は徒歩の実距離と一致しないことが多く、契約前にラッシュ時の所要時間を自分の足で確かめておきたい。住みたい街を先に決めるのではなく、職場の位置を起点にエリアを選ぶほうが失敗しにくい。家賃を月1万バーツ浮かせれば、年間では12万バーツ(約58万円)の差になる。その余白は、バンコクでの暮らしの自由度にそのまま跳ね返ってくる。