タイ政府が、外国人観光客らに認めてきた無査証(ノービザ)での滞在期間を、現行の60日から30日へ短縮することを決めた。アヌティン・チャーンウィーラクン政権が5月19日の閣議で承認したもので、日本を含むおよそ93の国と地域が対象となる。新ルールは官報に掲載されてから15日後に施行される。
タイは2024年、コロナ後の観光回復を狙ってノービザ滞在を30日から60日へ延長していた。今回はその措置を約2年でほぼ元に戻す格好で、短期の旅行者から長期滞在者まで幅広く関わる変更になる。
60日から30日へ、滞在の枠組みはこう変わる
新しい制度では、観光目的のノービザ滞在が30日まで認められるのは54の国と地域となる。日本のほか、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、スウェーデンなど、タイの主要な観光客送り出し国の多くがここに含まれる。
これとは別に、二国間協定に基づいて30日の免除が適用されるのが中国、香港、マカオ、ラオス、ベトナム、ロシア、モンゴル、カザフスタン、東ティモールの9の国と地域である。さらにアルゼンチン、ブラジル、チリ、ペルー、韓国の5か国・地域については、これまでどおり90日の滞在が維持される。
日本のパスポート保持者の場合、これまで入国時に自動で与えられていた60日の滞在枠が30日に半減することになる。
政府が掲げる短縮の理由
短縮の最大の理由として政府が挙げているのが、安全保障である。観光客を装って入国し、就労許可なく働いたり、許可のないビジネスを営んだり、国境をまたいだ犯罪に関与したりする外国人を防ぐ狙いがあるとしている。
60日という長い滞在枠が、こうした観光客のふりをした滞在を容易にしているという問題意識が背景にある。ここ数年はタイ各地で外国人による不法就労や、観光目的での長期の居座りが繰り返し報じられてきた。
30日を超えて滞在したい人はどうなるか
30日以内の一般的な旅行であれば、今回の変更による影響はほとんどない。多くの旅行者にとっては従来どおりパスポートだけで入国できる。
一方で、これまで60日のノービザを前提に長めの滞在を組んでいた人にとっては見直しが必要になる。30日を超えてタイに滞在する場合は、事前に観光ビザを取得するか、入国後にイミグレーションで延長手続きを行うなど、追加の手間とコストが生じる。タイでのロングステイや、拠点を移しながら働くいわゆるノマド層には小さくない影響が及ぶ。
観光業界の賛否と「見かけ倒し」批判
この方針をめぐっては、観光の現場からも賛同の声が上がっている。先に報じたプーケットやパタヤの観光業界が30日ノービザの復活を支持しているという話題では、長すぎる無査証滞在が不法事業者の温床になっているとして、むしろ質の高い消費をする観光客に絞り込むべきだという意見が紹介されていた。
その一方で、地元メディアからは、30日への短縮が本当に治安対策になるのか、それとも対応している姿勢を示すための見かけ倒しではないか、という疑問も投げかけられている。本気で不法就労や犯罪を抑えるなら、滞在日数を削るだけでなく、入国審査や摘発の体制そのものを強化する必要があるという指摘である。
いつから変わるのか
施行は官報への掲載から15日後となる。掲載の日付次第で実際の開始日が決まるため、タイ旅行を計画している場合は、出発前に最新の入国ルールを確認しておくのが安全である。タイの外国人観光客数は2026年に入っても回復が続いており、年明けからの5か月で1,300万人を超えた。観光を伸ばしたい思惑と、治安を引き締めたい思惑のあいだで、入国制度が再び揺れた形である。