タイ東北部ブリーラム県の国立公園で、地元の寺の住職を務める62歳の僧侶が、解体された妊娠中のオオトカゲとともに摘発され、密猟などの容疑で立件された。この僧侶は郡内の寺院を統括する僧職の地位にもあり、不殺生を説くべき立場の人物による事件として波紋を広げている。
国立公園の森で住職が摘発された
摘発があったのは5月27日の午後である。ブリーラム県ノンディンデーン郡にあるタープラヤー国立公園のうち、バーンラムナーンローン集落の南東に広がる森の中だった。パーデーン検問所の職員と、東北部を管轄する第2予防鎮圧支援事務所の職員が合同で見回りを行い、森の中にいた62歳の僧侶を取り押さえた。
この僧侶は同郡内の寺の住職であり、さらに郡区の寺院をまとめる僧職位に就いていた人物である。地域の仏教界では一定の地位にある立場だった。
解体された妊娠中のオオトカゲと狩猟道具
僧侶が所持していたのは、すでに解体され、火であぶった跡が残る野生のオオトカゲの死骸だった。重さは約1.5キロで、しかも腹に卵を抱えた妊娠中の個体だった。あわせて先のとがったナイフ1本も見つかっている。
国立公園内に生息する野生動物を、狩猟道具とともに解体していたという状況であり、当局は単なる立ち入りではなく密猟と判断した。僧侶は調べに対して一部を否認したものの、現場に残された証拠から立件は避けられないとされた。
問われる2019年国立公園法違反
僧侶に適用されたのは、2019年に施行された国立公園法の複数の条項である。野生動物をおびき寄せたり連れ出したり危害を加えたりする行為を禁じた第19条3号、許可なく公園内で利益を得る活動を行うことを禁じた第19条6号、そして許可なく狩猟や捕獲の道具、武器を公園内に持ち込むことを禁じた第19条7号にあたるとされた。
タープラヤー国立公園はもともと一般の立ち入りが制限されている区域で、保護の対象となる森と野生動物が広がっている。そこへ狩猟道具を持ち込み、妊娠した個体を含む野生動物を捕らえていたとなれば、罪は軽くないとみられる。
仏教界も調査に乗り出した
事態を受けて、ノンディンデーン郡の僧長は事実関係の調査を急ぐ考えを示した。郡僧長は、もし違反が事実であれば相応の処罰を受けるべきだとの姿勢を明確にしている。
タイでは僧侶は戒律によって生き物を殺すことを強く戒められており、自ら命を奪う行為とは距離を置くのが建前である。その僧職位にある住職が、国立公園で妊娠した野生動物を解体していたという今回の構図は、戒律と現実の落差を改めて突きつけるものとなった。地域の信徒からも戸惑いの声が出ているという。
タイの国立公園では近年、希少な野生動物の密猟や違法な森林利用の摘発が各地で続いており、当局は身分を問わず取り締まりを強める方針を示している。