タイ工業連盟(FTI)自動車部会の顧問・スポークスマンを務めるスラポン・パイシッパッタナポン氏(นายสุรพงษ์ ไพสิฐพัฒนพงษ์)は2026年5月25日、タイ国内の4月新車販売台数が48,394台で、前年同月比+2.54%となったことを発表した。販売を押し上げた主因は、3月末から4月初に開催されたバンコク・インターナショナル・モーターショー2026(Motor Show 2026)での予約のうち、過半数を占めたEV(電気自動車)の納車が4月に集中したこと。同期間にホルムズ海峡閉鎖を起因とする燃料価格急騰と、EV新モデルの追加投入も顧客のEV選択を後押しした。一方、ピックアップトラック販売は前年同月比9.7%減と落ち込み、金融機関の信用引き締めが影響している。FTIはタイ経済全体の購買力低下と中東情勢長期化を懸念し、部品メーカーの値上げ要求に慎重な対応を求めている。
4月販売48,394台、モーターショーEV予約が納車に転換
タイ国内の4月新車販売台数は48,394台で、前年同月比+2.54%。微増ながら、年初から続いた長期低迷からの回復の兆しを示す数字となった。販売増の最大の要因は、3月末から4月初にかけて開催されたバンコク・インターナショナル・モーターショー2026での予約。同モーターショーでの予約総数の過半数がEV(電気自動車)で、これらの納車が4月に集中したことが販売を押し上げた。BYD、長安(Changan)、Aion、テスラ、Omoda、Geelyといった中国系EVブランドに加え、トヨタbZ、Honda e:N1、日産Sakuraといった日本系EVも納車対象に含まれている。
乗用車・SUV33,654台、内ICEは7,109台
4月販売の内訳をセグメント別に見ると、乗用車・SUV(รถยนต์นั่งและรถยนต์อเนกประสงค์)の合計が33,654台で、全販売の69.54%を占めた。さらにこの中の動力源別では、ICE(内燃機関 / Internal Combustion Engine)車が7,109台で、EV・HEV・PHEVといった電動車が圧倒的多数を占める構造に変化している。タイの自動車市場は、購入動機の核心がもはやガソリン車・ディーゼル車からEVへとシフトしつつある現状を示している。
ピックアップは9.7%減、信用引き締めが直撃
一方、タイ市場の主力カテゴリーであるピックアップトラック販売は前年同月比9.7%減と低迷した。背景は金融機関の信用引き締め(เข้มงวดในการปล่อยสินเชื่อ / strict credit approval)。タイの中小事業者・農業従事者・地方居住者がピックアップを購入する場合、ローンを使うのが一般的だが、銀行・キャプティブファイナンス会社が審査基準を厳格化していることで、ローン審査を通過できないケースが増加している。タイ工業生産指数(MPI)の低成長、投資・雇用の停滞、国民の購買力低下といった構造的要因がローン承認率の低下に影響している。
ホルムズ海峡閉鎖+EV新モデル、複合要因がEVを押す
EV納車急増の背景には、複合的な要因がある。1つ目はバンコク・モーターショー2026でのEV予約集中。2つ目はホルムズ海峡閉鎖を起因とするガソリン・ディーゼル価格の急騰で、ランニングコスト面でのEV優位性が際立った。3つ目は各メーカーの新型EVモデル投入(BYD Sealion 7、Geely EX5、Aion Y Plus、Omoda E5、Honda e:N1等)で、選択肢の拡大が購入を後押しした。タイ政府のEV3.5政策(EV補助金・税制優遇)も継続中で、新車をEVで選ぶインセンティブが構造化している。
Q1/2026 GDP +2.8%、BOI承認案件で投資押し上げ
タイ経済全体は、2026年第1四半期のGDP成長率が+2.8%で、潜在成長率を下回るものの底堅さを維持している。BOI(タイ投資委員会)が承認した案件の本格投資が始まれば、雇用と生産が増加して景気を押し上げる可能性がある。さらに政府は4,000億バーツ(約1兆8,400億円)規模の借入計画を承認しており、エネルギー輸入削減と国内雇用増を狙う。これらが2026年後半に効果を発揮すれば、自動車需要にも好影響が及ぶ見込み。
部品メーカーの値上げ要求、中東戦争を理由に
スラポン氏が会見で最も懸念を示したのが、部品メーカー(ชิ้นส่วน / parts suppliers)からの値上げ要求。「中東戦争を理由とする部品値上げの動きがあり、これが販売と生産にさらなる下落圧力をかける」と指摘し、メーカー・部品サプライヤーに対して「購買力が弱い時期は、値上げを一定期間自粛してほしい」と要請した。タイ自動車産業のサプライチェーンは、現地調達率の高さで国際競争力を支えてきたが、金属・電子部品の輸入依存度はゼロではなく、中東情勢悪化による海運コスト上昇が部品コストにも波及する構造となっている。
米中貿易戦争+国際紛争、世界経済リスクも継続
スラポン氏は、世界経済リスクとして米中貿易戦争と国際紛争の継続も指摘した。タイの自動車輸出は中東に次いで欧州・北米・オセアニアにも展開しており、これらの市場の景気動向と為替変動が直接的に影響する。中東以外の市場でも、米国の関税政策、中国の景気減速、欧州の物価動向など、複数のリスクファクターが収益性に影響を及ぼし続けている。




