タイ・ブリーラム県の各家庭で5月24日深夜から、5月25日午前6時に始まる「タイ助けタイプラス60/40」の登録開始を待って、市民が電気をつけたまま眠らずに携帯電話の画面の前で待機する光景が広がった。同プログラムは月最大1,000バーツ・総額4,000バーツの給付を3,000万人に提供する仕組みで、定員に達した時点で登録は終了するため、ブリーラム県ムアン郡タルンレック町に住むサートーンさん(47歳)は「最初の一人になるために午前0時から起きている」と取材に答えた。仕事疲れで普段は夕方に帰宅してすぐ寝るが、今晩は60%の補助を逃さないために睡眠を犠牲にしている。前日に本サイトが伝えたチャイナット県の61歳女性が「やり方わからない」と権利を放棄した事例と対照的に、ブリーラムでは「眠らずに登録に挑む」必死の市民の姿が浮かび上がる。
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5月24日深夜、ブリーラム各戸で電気つけっぱなしの待機
5月24日午前0時を回った段階で、ブリーラム県内の住宅地は普段の深夜とは異なる雰囲気に包まれていた。各家庭の電気がつけっぱなしで、家族が居間や寝室で携帯電話の画面を見つめながら、5月25日午前6時の登録開始時刻を待っている。タイ助けタイプラス60/40は3,000万人の定員枠が設定されており、定員に達すれば登録が締め切られるため、「絶対に最初の一人になりたい」という意識が県内全域で共有されていた。
ムアン郡タルンレック町の47歳女性「最初の一人になりたい」
具体的な事例として取材に応じたのはブリーラム県ムアン郡タルンレック町に住むサートーンさん(47歳)。「5月25日午前6時から登録が始まると知った時点でドキドキした。登録に失敗するのが怖いから、絶対に最初の一人として通過させたい」と語った。普段は仕事で疲れているため、夕方に帰宅したらすぐに眠りに入る生活サイクルだが、今晩だけは午前0時から起きて画面に張り付くと決めている。
60%の補助を逃すと「家計の死活問題」
サートーンさんが必死になる理由は明確だ。タイ助けタイプラス60/40は、市民が40バーツ自己負担すれば政府が60バーツ補填する仕組みで、つまり実質的に「家計支出の60%が政府負担」となる。月1,000バーツの上限の中で4か月にわたって続くため、貯蓄に余裕のない家庭にとっては米・調味料・日用品の購入で年間4,000バーツ近い節約が可能になる。「登録に失敗すれば家計の60%補助を逃す。それは貧困層にとって死活問題」とサートーンさんは話す。
「眠れない夜」を選んだ市民の声、政府への要望
サートーンさんは取材の最後に、政府への要望を述べた。「政府には、補助を国民に届ける時に『当選するかどうか分からない不安なプロセス』ではなく、対象に確実に届く仕組みに変えてほしい。貧困層の生死に関わる支援だからこそ、運任せの抽選競争のような仕組みは見直してほしい」。これは登録初日の混雑と「先着順」型の制度設計に対する、現場の率直な声と言える。
「諦める層」と「眠らず挑む層」、デジタル格差の二重構造
タイ助けタイプラス60/40の登録初日に向けて、本サイトはチャイナット県の61歳女性が「やり方が分からない」と権利の行使を諦めた事例(屋根に大穴の家で95歳叔母+精神疾患の弟を介護する家庭)と、ブリーラム県の47歳女性が「眠らず最初の一人を目指す」事例の対照的な姿を伝えてきた。両者に共通するのは、いずれも経済的にこの給付を必要としている層であること。違いは「デジタル登録の壁を乗り越えるためのスキル・心身の余裕」の有無にある。タイ社会の中で給付政策が抱える「設計と現実の乖離」が、初日の夜の風景に凝縮されている形だ。
各地の銀行・PaoTang対応窓口で混雑、政府の対応が試される
ブリーラムだけでなく、ナコンラチャシマ、コンケン、ウドンタニーなどの東北部主要都市でも、登録初日の朝に銀行窓口や政府サービスポイントの混雑が予想されている。本サイトでも5月24日朝のナコンラチャシマ「ザ・モール」内クルンタイ銀行で長蛇の列ができた事案を伝えた。5月25日朝の登録開始から数時間で、定員3,000万人の枠がどのように消化されるか、政府のサーバー対応・銀行窓口対応・代理登録の仕組みが本格的に試されることになる。