タイ・ブリーラム県クームアン郡パッキアプ町で2024年10月10日に発生した暴行事件で、被害者の母親トンムアン・ウットラシーさん(60歳)が、息子のオンガート・アムマラットンさん(35歳)が知人から野球バットで瀕死の重傷を負わされた後、1年7か月経過しても捜査が進展していないとして、5月24日に報道機関に「公正な対応を求める」と訴え出た。被害者は事件当時、肋骨骨折・眼窩骨折・脳震盪の重傷でICUに2か月入院した。加害者は「警察の協力者(俗にいう"警察犬"=หมาตำรวจ)」を装い、警察に顔がきくと主張、母親と被害者家族に対しても警察が「事件を取り下げるよう」激しく脅迫してきたと母親は説明している。容疑は重い「殺人未遂」ではなく軽い「暴行」のみで立件され、損害賠償の交渉も加害者側が拒否したまま、事件は事実上の止まり木に置かれている。
2024年10月10日の事件、ICUに2か月入院の重傷
事件が起きたのは2024年10月10日。被害者のオンガートさん(当時35歳)は知人男性とのトラブルから、突然野球バットで激しく殴打された。被害は深刻で、肋骨が複数本折れ、目の骨(眼窩)が割れ、脳に震盪が及んだ。地元の救急車で搬送されたあとICUに2か月入院し、命は取り留めたものの、後遺症の懸念が残る状態。母親トンムアンさんは事件発生時、別の場所にいたが、近所の住民から「あなたの息子がやられている」と連絡を受けて駆けつけた。
加害者は「警察犬(หมาตำรวจ)」を自称、警察が捜査を止めようと脅迫
家族にとって特に苦痛だったのは、事件の経緯ではなく、その後の警察対応だった。母親と被害者本人は加害者が「警察の協力者(俗に"警察犬"=หมาตำรวจ、警察に情報を流して便宜を受ける民間人)」を自称しており、警察に顔がきくと主張していたと述べる。さらに、クームアン警察署(สภ.คูเมือง)の警察官が、母親に対して「事件を取り下げろ」と激しく脅迫してきたという。タイで「警察犬」と呼ばれるのは、麻薬や賭博の摘発で警察に情報を流す代わりに自分自身の違法行為が見逃される民間協力者を指す言葉。
殺人未遂ではなく軽い「暴行」のみで立件
警察が立件したのは「殺人未遂」ではなく軽い「暴行」のみだった。野球バットでの瀕死の殴打、被害者がICUに2か月入院した事実から考えれば、本来は「殺人未遂」あるいは「傷害致重症」での立件が妥当な事案。それを警察が「暴行」のみに留めている点で、家族と被害者は「警察が加害者を意図的に守っているのでは」との疑念を抱いている。さらに、損害賠償の交渉も加害者側は拒否し続け、被害者家族はICU費用2か月分の医療費を一銭も補填されていない。
1年7か月経過、母親が報道に訴え
事件発生から1年7か月が経過した5月24日、母親トンムアンさんはThairath・Khaosodなど複数の報道機関に対し「公正な対応をしてほしい」と訴え出た。地元では同様の「警察犬」絡みの事件で被害者側が泣き寝入りするケースが続いていると母親は述べ、メディアの注目が捜査を動かす契機になることを期待している。報道直後からSNS上でも「警察癒着への怒り」「捜査の再開を求める」声が広がっており、ブリーラム県警察と警察庁の対応に関心が集まる。
タイ地方の「警察犬」問題、過去にも繰り返し報じられた構図
タイの地方では、麻薬や賭博の摘発に情報を提供する「警察犬」が、見返りとして自身の違法行為を見逃される構造的な癒着が問題視されてきた。今回のブリーラム事案も、この構造の影が事件の捜査停滞の背景にあるとみられる。タイ警察庁は5月以降、サケオ警察団5人による中国人5人誘拐事件、カンチャナブリ警部補による豚焼肉店わいせつ事案など、警察職員自身の不祥事が相次いで報じられている。今回のブリーラム事案も、警察癒着問題の象徴的なケースとして全国的な議論を呼ぶ可能性が高い。



