タイ・メーホンソン県の村当局が2026年5月3日、ミャンマー国境を流れるサルウィン川(แม่น้ำสาละวิน)で採取される貝類からヒ素と鉛が基準を大きく超える濃度で検出されたとして、住民に食用回避を緊急要請した。発表したのはソプメイ郡メーサームレープ村(ต.แม่สามแลบ อ.สบเมย)のポンピパット・ミーベンチャマート村長。リスク群の子供・妊婦・高齢者・腎臓病・がん患者は特に厳禁とした。
検査の発端は、サルウィン川流域の住民ボランティア監視チームが採取した貝類サンプルを研究チームに送付したことだ。アジャーン・ワーン氏率いる研究チームは初期検査結果として、ヒ素濃度が「非常に高い」水準で検出されたと報告。特に最初の段階で死亡していた個体で濃度が際立って高かった。鉛も基準を超過していた一方、カドミウムは基準内、水銀は不検出だった。
研究チームが今後実施する3つの対応策は次の通り。第1に住民への食用回避指導。リスク群(子供、妊婦、高齢者、腎臓病・がん等の基礎疾患患者)には特に厳格な回避を要請する。第2に医学科学局の検査室で追加検査を実施し、毒性が極めて高い「無機ヒ素」の検出を進める。第3にユパパーン准教授(小児看護)が地域の健康リスクスクリーニング様式を作成中で、完成次第現地で展開する。
サルウィン川の重金属汚染は、北部タイで継続発覚している国境川の汚染シリーズの新展開だ。これまでメコン川でヒ素が基準の9倍検出され農業副大臣が緊急会議を招集した経緯があり、メージョー大学はメコン川重金属汚染を「空の川になる」と警告し中国資本のミャンマー側鉱山を汚染源と指摘していた。続いてメコン川支流のメーコック川(チェンライ)でもヒ素検出が拡大し、政府はオーストラリアの技術支援を受けて越境汚染対策の連携協議に着手していた。
サルウィン川は地理的にメコン水系とは別の川(インドシナ半島最長河川の1つで、チベット高原に源流を持ちミャンマー・タイ国境を経てアンダマン海へ流入)だが、ミャンマー側でレアアース・金鉱山が無秩序に拡大している点は共通する。汚染源は明示されていないものの、上流側の鉱山活動からの流出が強く疑われる。タイは下流側で水系全体の汚染影響を受ける構造的立場にある。
在タイ日本人にとっては、北部メーホンソン県・タック県のトレッキングツアー、サルウィン川流域の自然保護区訪問、現地市場での川魚・貝類購入の各場面で警戒が必要。特にホテル・宿泊施設・ローカル食堂で「サルウィン川の貝」「川魚の刺身・蒸し物」が出される可能性があるエリアでは、産地確認を徹底するか、確実に避けるのが安全だ。北部地方の蛍石鉱山反対デモが先住民400人で4年目に突入するなど、地域住民の環境保護意識は高まっており、政府の対応強化が続く展開が予想される。
医学科学局の追加検査結果と健康スクリーニング体制の整備が進めば、サルウィン川流域の長期的な汚染実態と住民への健康影響が段階的に明らかになる見通しだ。タイの環境省・公衆衛生省の正式発表と、ミャンマー側の鉱山操業状況を継続注視する必要がある。