タイ北部のメコン川で重金属汚染が深刻化している問題で、メージョー大学の専門家が警鐘を鳴らした。公害管理局(PCD)の検査でチェンラーイ県チェンセンのゴールデントライアングル付近の土砂から基準値の9倍のヒ素が検出され、水銀・カドミウムも広範囲で確認された。専門家は「このままではメコン川が空の川になる」と警告し、対応を急ぐよう政府に訴える。
Khaosodによると、メージョー大学水産技術・水資源学部長のアピナン・スワンナラック准教授が4月20日のインタビューで語った。PCDの公式検査では土砂中のヒ素が296mg/kgに達し、基準値の9倍である。チェンセン郡のゴールデントライアングル付近で採取された数値だ。
アピナン教授自身も独自に現地の調査を行っており、PCDの結果と同方向の汚染が確認されている。土砂の中にはヒ素・水銀・カドミウムが混在し、水生生物のエコシステムに直接影響を与えている状況だ。
「底生生物が最初に消える。その次は底魚が消える。最終的にメコン川は空の川になる」との警告が重い。底生生物は食物連鎖の基層を担う生き物で、これが消えると上位の魚・鳥・哺乳類が連鎖的に衰退する。魚を食べる住民への健康影響も長期的に蓄積する。
汚染源は国際政治の領域にある。メコン川上流のミャンマー領内と中国雲南省には金属鉱山があり、特にワ州連合軍(UWSA)支配地域の鉱山開発が排水の主因とされる。アピナン教授は「ワ州もミャンマーも単独で鉱山を運営する能力はなく、実際に動かしているのは中国の資本」と指摘する。
メコン川委員会(MRC)は沈黙を続けている。タイ側では農業省と天然資源環境省の対応要請がなされているが、国際交渉の場は動いていない。教授は「中国政府を交渉に加えるべき」と述べ、多国間の対応の必要性を訴えた。
短期的な住民対応では「水の使用は現時点で大きな問題はない」とのことだが、「川の土砂と水生生物への影響は深刻」と指摘した。メコン川で捕れる魚の摂取については、継続的な検査と制限が必要になる可能性がある。
在タイ日本人にとっても、北部・東北部でメコン川流域の魚を食べる機会がある場合は注意が必要である。淡水魚の産地表示と調理方法の確認、蓄積性の高い重金属に対する意識が健康管理の新たな要素となる。