タイ政府が5000億バーツ(約2兆円)規模の緊急借入政令(พระราชกำหนด、通称พ.ร.ก.)の発動を検討していることが明らかになった。戦争情勢の長期化とスーパーエルニーニョによる農業・経済への打撃に備える緊急措置で、4月20日にパコーン・ニンプラパン副首相が記者会見で発表した。
Khaosodによると、発表は4月20日午前9時35分、ノンタブリー県のインパクト・ムアントンターニで行われた。5000億バーツの緊急借入政令について「ありうる複合的危機に備えるための準備」とパコーン副首相が説明した。
政令発動の法的根拠はタイ憲法172条である。「緊急かつ国家安全または経済の維持のために必要な場合」に政府が国会の事前承認なしで政令を出せる条文で、発効後に国会の事後承認を求める流れになる。大恐慌や大災害への対応で過去にも使われてきた。
パコーン副首相は検討の背景として3点を挙げた。第一に、国庫の残高が現時点で低水準にあり余裕が少ないこと。第二に、戦争情勢(特に中東)や外部経済要因の読みにくさ。第三に、スーパーエルニーニョと呼ばれる気象異常の長期化で農業生産への大規模打撃が予想される状況である。
タイの農業は稲作・果物・ゴム・キャッサバなどが柱で、降雨パターンの変化はそのまま輸出額の減少につながる。農村家庭の所得が落ちれば国内消費も冷え込み、国全体のGDPに波及する構造だ。
実際の借入は5000億バーツ満額ではない可能性があるとパコーン副首相は示唆した。政令の枠組みを先に確保しておき、必要に応じて段階的に借り入れる運用が想定される。財務省は公債上限の拡大幅を並行して検討中である。
国会承認の見通しはまだ不透明だが、野党人民党は既に「ヴォラウォン議員による公債拡大への慎重論」を表明しており、政令の国会審議は活発な議論になる見通しである。
在タイ日本人と企業にとっても、政府の財政運営は金利・為替・物価の動向を通じて間接的に生活に影響する。5000億バーツという規模は国家予算の1割を超える大型案件で、今後の財政規律と市場反応を注視したい段階である。