アメリカが、強制労働でつくられた製品の流入を防ぐとして、タイを含む60の国と地域に追加の関税をかける案を打ち出した。米通商代表部(USTR)が6月3日に明らかにしたもので、税率は最大で12.5%に上る。中国やEU、日本なども対象に含まれており、実現すれば、タイの輸出にも影響が及びかねない。
強制労働を理由に60の国・地域へ
USTRは、貿易に関する通商法301条に基づき、調査した60の国と地域が、強制労働によってつくられた製品の輸入を禁じる措置を十分に取っていないと判断した。アメリカの労働者にとって不公平な競争条件になっている、というのが理由である。
提案された税率は2段階だ。強制労働に関わる輸入の禁止を全面的または部分的に導入している国には10%、それ以外の国には12.5%を上乗せする。カナダやEU、マレーシア、カンボジア、イギリスなどが10%の対象に挙げられ、残りの国々には12.5%が課されるという。
タイは最大12.5%の追加関税の対象に
タイも、この60の国・地域の一つに含まれている。報じられている10%の対象リストにはタイの名がなく、より高い12.5%の側に分類される可能性がある。すでにタイの輸出は別の関税交渉などでも揺さぶられており、新たな上乗せは輸出企業にとって重い負担になりかねない。
タイにとってアメリカは、最大級の輸出先の一つである。すでに今年は、別の枠組みでの関税をめぐる交渉も続き、タイ政府は19%の関税で折り合いをつけるなど、対米貿易のかじ取りに神経をとがらせてきた。今回の強制労働を理由とした関税は、それとは別の新たな火種となる。ただし、これはあくまでアメリカ側の提案の段階であり、最終的にどうなるかは今後の手続き次第である。対象国は反論や協議の機会を与えられるのが通例で、タイ政府も対応を迫られることになる。
タイの水産業と「強制労働」
今回の措置で焦点となる強制労働は、タイにとって無縁の問題ではない。とりわけ水産業では、漁船や水産加工の現場で、ミャンマーやカンボジアからの出稼ぎ労働者が劣悪な環境で働かされていた実態が、過去に国際的な批判を浴びた。タイ政府はその後、規制の強化や監視に取り組んできた。
今回の関税案は、そうした人権や労働の問題を貿易の手段として持ち出すものでもある。アメリカは過去にも、人権や環境を理由に貿易上の圧力をかけてきた。タイがこれまでの改善努力をどう示し、追加の関税を避けられるか。安い労働力に支えられてきた産業のあり方そのものが、改めて問われている。