バンコクの一角で、中国の通貨「人民元」でしか支払えない中国料理店が話題になっている。指摘したのは、来店した中国人のインフルエンサーだった。タイのバーツも、広く普及する電子決済も使えず、人民元の現金か中国のアプリ決済のみ。その様子をSNSで紹介したことで、これは合法なのかという疑問が広がっている。
人民元とWeChatのみ、バーツは使えず
声を上げたのは、ワン・ビンヤンさん(28)という中国人のインフルエンサーである。5月25日、バンコクのフワイクワン地区にある中国料理店を訪れたところ、店はタイの銀行口座を持たず、中国の現金とWeChatの決済しか受け付けなかったという。タイで広く使われるQRコード決済も使えなかった。
店員からは中国人かどうかを尋ねられ、結局、人民元で支払ったが、その額は通常より50バーツほど高かったという。本来、タイの店でタイのバーツが使えないというのは、地元の利用者からすれば奇妙な光景である。ワンさんは「これは合法なのか」と疑問を投げかけ、タイで商売をする中国系の事業者は現地のルールを守るべきだと訴えた。
「中国人街」化するフワイクワン
フワイクワン地区は、近年、中国からの移住者や事業者が急増し、チャイナタウン化しているとも言われる一帯である。今回の店についても、タイのSNS利用者からは、関係当局がこの店や周辺の事業者が合法に営業しているか調べるべきだとの声が相次いだ。
タイには近年、観光だけでなく、移住や投資の目的で中国から来る人が大きく増えた。なかには、タイ人の名義を借りて実質的に外国人が経営する「ノミニー」と呼ばれる手法で、規制を逃れて商売をする例も指摘されている。今回の店が違法かどうかは調査を待つ必要があるが、こうした不透明な営業への警戒感が社会の側に高まっている。
地元の女性からは、この店が日ごろから入り口を施錠し、客は出入りの際に店員に声をかける必要があったとの証言も出ている。一方、タイのメディアが周辺の別の飲食店を訪ねたところ、そちらはバーツやタイのQR決済に対応していたという。問題の店は、取材に応じていない。
合法なのか、当局の対応は
外国の通貨だけで商売をすることは、税金や為替の管理という観点から、さまざまな問題をはらむ。売上がタイの銀行を通らなければ、税の捕捉も難しくなる。指摘したのが中国人自身だったことからも、これは単純な反中感情の話ではなく、ルールを守って商売をしているかどうかの問題だといえる。
バンコクでは、観光客の増加とともに、外国人が経営する飲食店や商店が一気に増えた。多くは地元のルールに沿って営業しているが、なかには今回のように、母国の流儀をそのまま持ち込む例もある。受け入れる側のタイが、こうした動きにどう向き合い、ルールをどう徹底させるかが問われている。